「純資産って何?」
「純資産にはどんな科目がある?」
このような疑問や不安を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、純資産とは返済不要の資産、つまり「自己資本」のことです。
自己資本が多ければ多い程会社の財務状況は安定していると言えます。
決算においては純資産額が会社の財務状況を確認する指標となり、金融機関や株主が最も気にする科目となります。
今後金融機関からの借入を検討している人は必ず理解しておきましょう。
そこで今回は、決算における純資産について徹底的に解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
決算における純資産とは
決算書の貸借対照表は「資産の部」「負債の部」そして「純資産の部」があり、資産の部=負債の部+純資産の部という数式が成り立ちます。
資産や負債は想像がしやすいですが、純資産については良くわからないという人も多いのではないでしょうか。今回はそんな純資産について詳しく解説していきます。
純資産を簡単に言うと「返済義務がない資産」のことです。違う言葉で言えば会社が自分で保有している「自己資本」です。
この純資産は、会社の財務状況を判断するのに大きく役立ちます。
特に、金融機関が借入判断をする際には純資産額の大小が大きく関わります。
自己資本が多ければ多い程、その企業の返済能力が多いと判断することが出来ます。
自己資本が小さいと、債務に対する返済能力が低く、融資金の回収が出来ないと判断とされやすく、引いては与信判断が不利に働きます。
尚、純資産は必ずしもプラスになる訳ではありません。
純資産がマイナスとなれば、健全な会社経営が出来ていると言えず、債務超過となり倒産のリスクが大幅に拡大します。
純資産がマイナス(債務超過)について
前述した通り、貸借対照表は
「資産の部」=「負債の部」+「純資産の部」
という数式が成り立ちます。
具体的な例を用いて説明しましょう。
資産超過の場合
単位:万円
資産の部 | 負債の部 | ||
---|---|---|---|
現金 | 50 | 買掛金 | 100 |
預金 | 100 | ||
売掛金 | 100 | 小計 | 100 |
純資産の部 | |||
資本金 | 100 | ||
利益余剰金 | 50 | ||
小計 | 250 | 小計 | 150 |
合計 | 250 | 合計 | 250 |
例えば以上のように決算した場合、会社の資産として250万円、会社の負債として100万円あることが分かります。
資産が負債より多ければ、会社の健全性が高いことが分かります。資産の内、負債の支払を控除して残ったものが純資産(支払義務のない資産)となります。
つまり、この会社は自己資本が150万円あり、健全経営を行っていると判断することが出来ます。
債務超過の場合
単位:万円
資産の部 | 負債の部 | ||
---|---|---|---|
現金 | 50 | 買掛金 | 100 |
預金 | 100 | 長期借入金 | 500 |
売掛金 | 100 | 小計 | 600 |
純資産の部 | |||
資本金 | 100 | ||
利益余剰金 | ▲450 | ||
小計 | 250 | 小計 | ▲350 |
合計 | 250 | 合計 | 250 |
次に債務超過の具体例を確認していきましょう。
債務超過とは、資産よりも負債が多い状態を言います。
つまり、会社が保有している財産では、負債を返しきれない状態が債務超過です。
債務超過の場合返済義務のない自己資本はもちろんなく、その上利益余剰金がマイナスとして記載されます。
貸借対照表は資産の部と負債・純資産の部が必ず一致しなければならないため、純資産の部をマイナス計上することで調整します。
これは自己資本が割れており、会社の経営として非常に問題がある状態を言います。
資金繰りも厳しく、金融機関からの借入調達もままならない状態で、今すぐに対策を講じる必要があります。
純資産の内訳
純資産の部に記載される科目は以下の通りです。
- 株主資本
- 評価換算差額金
- 新株予約権
それぞれ詳しく解説していきましょう。
株主資本
株主資本には「資本金」「資本余剰金」「利益余剰金」「自己株式」に分けることが可能です。
資本金
資本金とは、設立の際に株式と引き換えに集めた資金のことです。
尚、資本金は株主から受入れした金額を全額計上する必要はありません。原則株主が払込した金額の2分の1を超えない額は資本金として計上しないことも可能です。
資本金の額によって税金額も大きく変わります。顧問税理士などと相談しながら資本金額を計算するのが良いでしょう。
資本余剰金
資本余剰金は更に「資本準備金」「その他資本余剰金」で構成されます。
資本金として組み入れなかった分は、こちらの資本余剰金として計上されることとなります。
利益余剰金
利益余剰金は更に「利益準備金」「その他利益準備金」で構成されます。
利益準備金は会社が計上した利益を、株主への分配に備えて積み立てておくお金のことを言います。
自己株式
自己株式は、自社で保有している株式のことです。
評価換算差額金
株などの有価証券を保有している場合で、時価評価により洗い替えした際の評価差益を計上します。
新株予約権
新株予約権はあらかじめ決めた価格で株式を取引できる権利のことです。
新株予約権で会社が新しい株式を発行したり、自己株式として計上したりすることが出来ます。