「赤字になるから減価償却をしたくない」
「減価償却しなくても大丈夫?」
このような不安や疑問や不安を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、減価償却は法人であれば税法上しなくても良いとされています。
しかし、減価償却をしないデメリットもいくつかあるので、しっかり理解した上で減価償却費の計上を検討した方が良いでしょう。
今回は、決算における減価償却費の取り扱いについて紹介していきます。
【目次】
減価償却とは
まずは減価償却について説明していきます。
減価償却とは有形固定資産の耐用年数と同じ年数まで何年にも亘って経費計上していく手続きのことです。
実は、事業に使う車や建物、設備などの有形固定資産は「減価償却」の対象となり、原則一括で損金計上することが税法上認められていません。
なぜなら、例えば新車を買って1年で使い切ることが考えにくいように、耐用年数分使い続けることを前提に、その価値を毎期経費として計上します。
また、中小企業であれば、1つの価格が30万円未満であることを条件に所有したその年の経費として全額計上することが出来ます(年間300万円まで)。
尚、減価償却には毎期定額で経費計上してく「定額法」と、毎期一定の割合をかけて計算する「定率法」の2つの方法があります。
会社の決算時に減価償却しないことも出来る
減価償却は先ほど説明した通り、購入から耐用年数分毎期経費計上していきます。
しかし、法人の決算においては減価償却計上するのは任意とされていて、計上しなくても良いことが税法上認められています。
※税法上減価償却しないことは認められていますが、減価償却を多く行うことは認められていません。
ただし、減価償却が任意なのは法人のみであって、個人事業主の場合は必ず減価償却しなければいけません。
決算で減価償却しない場合はどうなる
減価償却をしない場合どうなるのでしょうか。
減価償却は損益計算書上の経費として計上されるため、償却しない場合はその分利益として計上されます。
例えば、以下のケースで考えてみましょう。
【本来の損益計算書】
売上 | 1,000万円 |
---|---|
減価償却費 | 500万円 |
その他経費 | 700万円 |
利益 | ▲200万円 |
【減価償却しない場合の損益計算書】
売上 | 1,000万円 |
---|---|
減価償却 | 200万円 |
その他経費 | 700万円 |
利益 | 100万円 |
本来償却すべき普通償却範囲額が500万円であれ、本来の損益計算書では▲200万円で決算します。
しかし、表にある通り減価償却を200万円しかしなかった場合は100万円の利益を確保して決算することが出来ます。
つまり、減価償却をしないことで本来赤字決算となるところを、黒字で決算することが出来るという事です。
また、有形固定資産が減らないため、貸借対照表上でも有利に働きます。
減価償却しない理由は?
経営者が減価償却しない理由は「金融機関からの資金調達」がしやすいと考えているからです。
金融機関にとっては赤字で決算されるよりも黒字で決算した方が印象としては良くなります。
しかし、金融機関からしたら減価償却を実施して黒字なのか、減価償却を実施しないで意図的に黒字にしたのかどうかは、簡単に判断出来てしまいます。
結局不足分は金融機関の査定時に不良資産認定され、貸借対照表から差し引きして計算されます。
事実上赤字であったことも分かってしまうので、おすすめ出来る方法ではありません。
尚、金融機関は赤字であるか黒字であるかという基準よりも、本業でキャッシュフローが取れているかという基準で融資判断することがほとんどです。
これはつまり、事業で返済出来るだけの現金を生んでいるかという事を重要視しているという事です。
金融機関は基本的に営業利益(もしくは当期利益)+減価償却費で会社の支払い能力を計算するので、減価償却を満額行って利益が赤字になるのと、減価償却を一部行わず利益がでるのとで比較しても、結果は同じなのが分かります。
減価償却しないデメリット
減価償却をしなければ黒字となり、決算上は利益が出ます。
しかし、利益が出る以上税金がかかることを忘れてはいけません。
減価償却すれば本来払う必要のなかった税金についても支払う必要が出てしまう他、繰越欠損を使うことも出来ないので、デメリットの方が多いと言えます。
減価償却してもしなくても手元にのこる現金は同じなので、基本的に減価償却は毎期決められた額をしっかり行うようにしましょう。
まとめ
- 減価償却しないことも税法上認められている
- 減価償却しないと利益として反映され税金額が増える
- 資金調達においては黒字であるかどうかよりもキャッシュフローが取れているかが重要
減価償却の仕組みと、減価償却の計上について理解できたと思います。
減価償却は基本的に耐用年数に応じて行っていく方が良いでしょう。
会社運営していく以上赤字になる期があることは悪いことではありません。
赤字にしないように無理やり決算を操作する方が、後々になって税負担の重さから資金繰りを圧迫する可能性もあります。
原則決められた額の減価償却をするようにしましょう。
本業で利益が出ずに困っている人は事業そのものの改善が求めらるので、税理士などに相談することも検討してはいかがでしょうか。