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株の配当期待権って何?相続税にどう影響する?

株の配当期待権って何?相続税にどう影響する?

「配当期待権って何?」
「相続税にどう関わってくる?」
「相続税の申告はそもそも必要?」

このような疑問や不安を抱えている人は少なくありません。

結論から言いますと、配当期待権とは被相続人が保有していた株式の配当が確定した状態のものを言います。

配当を受け取る権利が確定していることから、相続人は配当に応じた相続税の支払義務が生じます。

今回は配当期待権と相続税について詳しく解説していきます。

配当期待権とは

配当期待権とは、「将来的に発生しうる配当を受ける権利」のことです。

企業の決算日(配当基準日)の翌日以降に株主が亡くなると、配当を受ける権利は相続人が引き継ぐことになるため、この配当期待権は相続税の申告対象となります。

また、株主の死亡時期によっては配当期待権から「未収配当金」と変わることとなります。

未収配当金については、詳しく後述します。

株式配当の流れ

株式配当の流れについて把握することで、配当期待権について理解がしやすくなります。

株式配当は以下の流れで行われます。

  1. 配当基準日
  2. 配当確定日
  3. 受取日

それぞれについて詳しく説明していきましょう。

<配当基準日>
配当を行う会社の決算日のことを配当基準日と言います。

決算日に配当金額の基準となる損益が確定し、決算日時点で株主名簿に名前が記載され、配当金を受け取る権利が与えられることとなります。

<配当確定日>
会社の配当金額名、株主総会の決議を経た後に確定します。

実際この株主総会で配当が確定してから配当金交付の効力が発生することから、配当金は株主総会の決議日(配当確定日)の後に支払われることとなります。

<受取日>
株主が実際に配当金を受け取る日のことを言います。

通常であれば配当基準日(決算日)から2ヵ月~3か月程度必要になります。

尚、会社によっては四半期決算ごとに配当基準日がある場合もあるため、相続税の申告に配当が関係してくる場合は注意が必要です。

相続税の申告が必要になるケース

配当期待権が相続税申告の対象となるケースは、以下の3つの条件を満たしている場合です。

  1. 被相続人が株主で、配当を受け取る権利を確定している場合
  2. 配当基準日の翌日以降から配当確定日までの間に死亡した場合
  3. 死亡日以降に配当金を受け取る場合

尚、なくなった時点で被相続人が株式を保有していない場合で配当期待権が生じるケースもあるので注意が必要です。

というのも、配当を受け取る権利は配当基準日に株式を保有していることが条件のため、配当基準日を経た後株式を売却しているケース等は相続時点で株式を保有していないこととなります。

しかし、配当基準日を超えた株式には配当期待権が存在することから、配当期待権は相続され、相続税の申告対象となります。

配当期待権の評価方法

では実際に相続税の対象となった配当期待権は、どのように評価すればいいのでしょうか。

配当期待権の評価方法は以下の方法で評価されます。

配当期待権=予想配当金×(1-源泉徴収税率)×取得株式数

尚、上場株式と非上場株式で源泉徴収税率が変わってきます。

  • 上場株式:20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
  • 非上場株式:20.42%(所得税のみ)

配当金の取り扱いについて

相続開始日によって配当金の取り扱いが変わってきます。

ケース1:配当基準日までに死亡
ケース2:配当基準日の翌日から配当確定日までに死亡
ケース3:配当確定日の翌日から受取日までに死亡

それぞれ確認していきましょう。

配当基準日までに死亡

配当基準日までに株主が亡くなった場合は、死亡後に支払われる配当金は相続税ではなく所得税の対象となります。

被相続人の人は、配当所得として確定申告しなければなりません。

配当基準日の翌日から配当確定日までに死亡

決算日時点で被相続人が株主であった場合は、配当を受け取る権利を確定することが出来ますが、配当金の金額は確定していません。

この状態を配当期待権と言い、配当期待権は相続税の課税対象となります。

配当確定日の翌日から受取日までに死亡

配当確定日を経ると、配当の金額が確定することから、配当は期待権ではなく未収配当金となります。

つまり「期待」ではなく、まだ受け取っていない金額という事になるのです。

未収配当金も配当期待権と同様に相続税の課税対象となります。

尚、未収配当金の評価額は、配当期待権と同様の処理となります。

受取配当金の額から源泉徴収税額を差し引いた金額で評価し、相続税の確定申告をして下さい。

まとめ

  • 配当期待権は相続税の申告対象となる
  • 未収配当金も相続税の申告対象となる
  • 配当基準日を超える前に相続となった場合は配当所得となるため注意が必要

被相続人が株式を保有している場合は、株式評価の他にも、その配当も相続財産となることに注意して下さい。

相続手続きが進んで資産確定手続き中に、急に配当金が振り込まれるという事も考えられますので、事前に配当期待権や未収配当金があるかどうかは確認しておくことが望ましいです。

予想していなかった多額の配当が振り込まれた場合は相続手続きが振り出しに戻ることもあり得ます。

もし、相続手続きに不安があるという人は、税理士に一度相談してみてもいいかもしれません。

相続税の相談を税理士へするメリットとは?

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