「事業承継税制って何?」
「後継者の税負担が減るって本当?」
このような疑問や不安を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、事業承継税制を利用することで事業承継時に大きな負担となっていた後継者の税負担が大幅に削減出来ます。
今回は事業承継税制のメリットについて解説していきます。
【目次】
事業承継税制とは
事業承継税制とは、一定の要件を満たすことで相続税・贈与税の税負担を軽減できる制度です。
事業承継における障壁の一つとして挙げられるのが「株式を後継者へ移す際の相続税や贈与税の納税負担」です。
株式の評価額が高ければ高い程、後継者の税負担が重くなることからスムーズに事業承継が行われず、結果廃業してしまう企業も存在します。
そのようなケースに対応するために本制度を利用して、後継者の税負担を軽減することが重要になります。
事業承継税制のメリット
事業承継税制では、現在の会社の規模や財務状況、事業承継の方法等、ケースによってメリットを受けられるか変わってきます。
様々な事例を基に事業承継税制のメリットについて説明していきます。
自社株式評価額1億円以上のケース
自社株式の評価額が1億円以上の場合は、事業承継税制を利用するメリットがあります。
1億円に満たない場合は、相続や贈与を利用した方が効率良く事業承継出来る可能性がありますので、そちらを検討されることをおすすめします。
簡単に控除額の計算をしてみます。
<相続税>
- 相続税の基礎控除
3,000万円+(600万円×法定相続人)
と定められています。
法定相続人が1人であった場合:3,600万円
法定相続人が3人であった場合:4,800万円
一定額基礎控除として控除されます。
株式は相続財産となるため、基礎控除内で収まるのであれば事業承継税制を使う必要はありません。
ただし、株式以外に「現預金」や「不動産」等のその他の相続財産を多く持っている場合は、仮に自社株式の評価額が1億円に満たない場合であっても総計で相続財産が多額となることから、事業承継税制を利用するメリットはあると言えるでしょう。
<贈与税>
贈与には
- 暦年贈与:年間110万円
- 相続時精算課税制度:1人当たり2,500万円
の二つの方法があります。
暦年贈与の場合は年間110万円まで控除が可能です。
ただし事業承継における株式贈与の場合は、事業承継に大幅な時間を要する可能性が高いため現実的な方法ではありません。
相続時精算課税制度を利用する場合は1人当たり2,500万円まで特別控除されます。
仮に2人に株式贈与を行う場合は、最大で5,000万円まで控除、つまり非課税で贈与することが可能です。
相続や贈与を利用することで納税額を大幅に削減出来ます。
ただし株式評価が1億円を超える場合、これらの制度を利用しても納税額が大きくなる事から、事業承継税制の利用を検討される事をおすすめします。
業績が右肩上がりの会社
業績が右肩上がりの会社は事業承継税制を利用を検討した方が良いでしょう。
先ほど説明した通り、事業承継税制は5年間事業継続が出来れば相続税や贈与税の納付猶予が受けられる税制優遇です。
事業承継税制を利用してから向こう5年間、業績が右肩上がりでいくと予想されるケースは、事業承継税制を受けるメリットがあるでしょう。
親族内承継の会社
親族内承継の会社は、事業承継税制を利用することで後継者へスムーズな承継をすることが可能です。
制度を利用することで、後継者となる子供や配偶者の税負担を大幅に削減出来ます。
具体的には以下のような負担軽減が期待できます。
- 相続税や贈与税が猶予されることから、税負担を大幅に軽減できる
- 事業の売却や廃業時に納税額の再計算による差額分を免除できる
また、平成30年に行われた事業承継税制の改正により、雇用要件(事業承継から5年間、平均で8割の雇用を維持する)が事実上撤廃される等、利用するための要件が緩和されたことから、今まで以上にメリットを受けられやすくなりました。
親族外承継の場合
親族外承継の場合は、経営者から後継者へ株式の贈与する方法が考えられますが、事業承継税制を利用することで贈与税を100%猶予扱いにすることが出来ます。
また、事業承継税制を利用することで、原則親族内でしか利用できない相続時精算課税制度を、親族外であっても利用できる等の特典があることから、親族外承継の場合は特に事業承継税制のメリットを受けやすいでしょう。
まとめ
- 事業承継税制は後継者の税負担を軽減できる制度
- 株式評価額が1億円を超える企業や業績が右肩上がりの企業等にメリットがある
- 親族内外の事業承継にそれぞれメリットがある
事業承継税制は後継者の税負担を軽減出来る制度で、要件に合致するのであれば積極的に利用を検討したいものです。
ただし要件が分かりにくかったり手続きが煩雑であるという点も指摘されていることから、もし利用を検討したい人は顧問税理士かお近くの税理士事務所に相談してみて下さい。
税理士であれば本制度の手続きも代行してくれる他、サポートも行ってくれるため、事業承継を検討している人は、利用できるかどうか一度検討してみるのが良いでしょう。