「損益計算書と貸借対照表について知りたい」
「青色申告特別控除を満額受けるためには貸借対照表の作成が必要って本当?」
このような不安や疑問を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、原則、個人事業主の確定申告においては貸借対照表の作成義務はありません。
しかし、青色申告特別控除を満額受けるためには貸借対照表の作成が必須となるため注意が必要です。
青色申告特別控除の適用を検討されている人は、まず損益計算書と貸借対照表について理解しておくようにしましょう。
これらについて理解を深めることで、青色申告の特典を最大限受けることができる他、自分の事業についても数字で理解することにも役立ちます。
そこで今回は、確定申告における損益計算書と貸借対照表について説明するとともに、記載する内容についても一緒に解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
確定申告の必要書類
青色申告で確定申告する場合
- 損益計算書(1~3枚目)
- 貸借対照表(4枚目)
以上の2点、書類の作成が必要になります。
青色申告の確定申告には4枚書類を作成する必要があり、1枚目から3枚目が損益計算書、のこり1枚が貸借対照表となっています。
それぞれ確認していきましょう。
確定申告における損益計算書とは
損益計算書とは、財務諸表の内、企業の一定期間の収益と費用から損益計算をまとめた書類です。
損益計算書は
- 収益⇒どれだけ稼いだか
- 費用⇒稼ぐのにどれだけお金を使ったか
- 利益⇒収益から費用を差し引いたもの
の3つの要素から成り立っており、それぞれが相互に関係しあっています。
個人事業主が青色申告で確定申告する場合、損益計算書の作成が義務付けられていますので、必ず作成するようにしましょう。
損益計算書には、事業所得用の「一般様式」の他、不動産所得用の「不動産所得様式」、農業所得用の「農業所得様式」などが用意されており、自分に合った様式を選択する必要があるため注意が必要です。
尚、青色申告が可能なのは「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のみです。
その他の所得については選択出できないため併せて覚えておきましょう。
損益計算書1枚目
確定申告における損益計算書の1枚目は、全体的な収支について計算します。
参考:
損益計算書では以下の順で計算していきます。
- 総売上高を記入
- 総売上高を計上するために必要になった売上原価(仕入等)を計算
- 売上高から売上原価を差し引いた金額を計算(売上総利益)
- 売上高を計上するために必要になった経費(人件費など)を計算
- 売上総利益から経費を差し引いた金額を計算(営業利益)
- 控除前所得から専従者給与や貸倒引当金を計上
- 青色申告特別控除前の所得金額を計算
- 青色申告特別控除額を差し引く
- 所得金額を計算
損益計算書2枚目
損益計算書2枚目は、勘定科目ごとに詳細内容を記載していきます。
ここでは、月間売上高や月間仕入高の記載、給与賃金の記載、専従者給与の記載、貸倒引当金の記載、青色申告特別控除額の記載などが必要です。
損益計算書3枚目
損益計算書3枚目では、2枚目同様に経費の内訳について記載します。
ここのメインとなってくるのが減価償却の計算です。
現在保有している、もしくは年度中に除去や売却した資産の減価償却を行います。
個人の償却に関しては、事前に税務署に届けていない限り原則「定額法」で計算して下さい。
<定額法>
- 取得金額を耐用年数で除して計算
例)中古車両100万円を1月1日に取得 耐用年数2年の場合
100万円÷2年=50万円(1年間の減価償却費)
※尚、期中に取得した場合は、月割りで計算して減価償却費を計上する必要があります。
その他にも、利子割引料や地代家賃、税理士や弁護士に対する報酬額などの詳細も3ページ目に明記します。
確定申告における貸借対照表とは
貸借対照表とは決算時点の資産と負債及び純資産を表した財務諸表です。
左側に資産、右側に負債と純資産を記載し、左側と右側の合計が必ず一致することからバランスシートとも呼ばれます。
貸借対照表では、「事業資金がいくらあるのか」「設備投資はどの程度行っているのか」「借入金はいくらあるのか」など、財産状況や負債状況を俯瞰してみることができます。
つまり、貸借対照表を作成しておくことで事業の状況が数字で理解することが容易になるため、資金繰りや事業計画策定において作成していることが有利に働く可能性が高いです。
銀行などの金融機関からお金を借りる可能性があるのであれば、多少面倒くさくても貸借対照表は作成しておく方が無難でしょう。
因みに、個人事業主に対しては、仮に青色申告をしていたとしても貸借対照表の作成は義務化されていませんが「青色申告特別控除」を満額受けるためには貸借対照表の作成が必要になります。
貸借対照表の作成は複式簿記を用いて行うため素人ではなかなか難しい場合が多いです。自分で作成が難しい場合は税理士などの専門家に依頼するのも手段の一つです。