業務に係る雑所得の範囲について、国税庁は、収入金額の規模が300万円を超えない場合は、雑所得とする案を公表し、パブリックコメントで意見募集しています。
事業性の判定基準は300万円
事業所得か雑所得かの別は、まず、社会通念上、事業と称する程度で行われているかで判断するとしています。
不動産所得では、5棟10室基準が事業的規模の目安とされていますが、事業所得では、これを収入金額300万円で線引きするというものです。
副業・兼業を営む給与所得者の多くにとって、事業所得者となるためには、大きなハードルが課されることになりそうです。
事業所得とするメリット
給与所得者にとって、副業・兼業が事業所得となる場合、青色申告特別控除(最大65万円)を受けられるほか、事業所得が赤字のときは、給与所得と損益通算できることがメリットです。
一方、副業・兼業が雑所得とされた場合は、青色申告特別控除を受けられず、給与所得と損益通算の恩恵も受けることはできなくなります。
給与所得の扱いは憲法に違反しない
判例には、給与所得と事業所得の課税の違いが違憲ではないか争われたものがあります(大島訴訟)。
納税者は、事業所得の経費には実額控除を認めるのに、給与所得の経費を概算控除とする取扱い、それぞれの所得の捕捉率の較差、事業所得の特別措置は不公平であり、憲法14条1項(法の下の平等)違反に当たると主張しました。
しかし、最高裁は、給与所得者の経費のほとんどは使用者が負担していること、給与所得者に実額控除を認めると、家事費、家事関連費が混入し、かえって不公平が生じる弊害などを理由に、納税者の主張を認めませんでした。
その後、給与所得に特定支出控除が創設され、一部是正されました。
300万円基準は、赤字の回避が目的か?
事業的規模の判定要件を収入金額300万円超とする今回の改正案は、クロヨンと言われる給与所得と事業所得の捕捉の精度の違いを残したままにしているようです。
事業所得の経費には概ね、300万円かかると想定し、事業所得が赤字とならない程度の収入金額として、300万円を設定したのではないでしょうか。
そして300万円超の事業所得については、請求書や領収証の保存により、税務調査で適時把握できると考えているのではないかと思われます。