「事業承継補助金の内容について知りたい」
このような疑問を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、事業承継補助金は事業承継における投資を積極的にサポートする補助金となっています。
制度の内容をしっかり理解することで、事業承継時の新たな取り組みに対して補助金申請が出来ますので、ぜひ利用してみて下さい。
今回は事業承継補助金について解説していきます。
【目次】
事業承継補助金とは
事業承継補助金とは、事業承継をきっかけにして「新たな取り組みをする中小企業・小規模事業者」を対象とした中小企業庁が取りまとめをしている補助金の事です。
本補助金は、近年の中小企業の後継者不足が大きな問題となっており、事業承継が上手くいかないことによる廃業が目立つようになったことから、スムーズな事業承継を行えるように始まったのが背景です。
事業承継補助金では、親族内承継はもちろんの事、社内承継、M&Aによる事業承継においても利用可能となっています。
中小企業の後継者が積極的に投資を行い、事業を存続・拡大させる試みを応援する補助金となっています。
事業承継補助金の種類
事業承継補助金には以下の2つの種類があります。
- Ⅰ型:後継者承継支援型
- Ⅱ型:事業再編・事業統合支援型
ぞれぞれについて詳しく解説していきます。
Ⅰ型 後継者承継支援型
【補助内容】
Ⅰ型:後継者支援型 | 補助率 | 補助上限額 | 上乗せ額 |
---|---|---|---|
原則枠 | 1/2以内 | 225万円 | +225万円(合計上限額450万円) |
ベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠 | 2/3以内 | 300万円 | +300万円(合計上限額600万円) |
Ⅰ型:後継者承継支援型は「後継者が新商品開発等新たな取り組みに要する経費の一部を補助」することが目的となっています。
<上乗せ額>
上乗せ額とは、事業転換により廃業登記費用や解体・処分費が発生する場合に補助金の上限額が引き上げされる制度を言います。
原則225万円(上乗せ額との合計450万円)までですが、以下の要件を満たすことでベンチャー型事業承継枠もしくは生産性向上枠の利用により、300万円(上乗せ額との合計600万円)まで補助を受けることが可能です。
<ベンチャー型事業承継枠>
- 新商品の開発又は生産、新役務の開発または提供、若しくは事業転換による新分野への進出を行う計画であること
- 事務局が定める期間において従業員数を一定以上増加させる計画であること
- 補助事業実施期間内において補助事業に直接従事する従業員を1名以上雇い入れた事実を確認できること※
※ただし有期の雇用契約は対象とならない
<生産性向上枠>
- 後継者が2017(平成29)年4月1日以降から交付申請日までの間に、申請する補助事業と同一の内容で「先端設備等導入計画」または「経営革新計画」のいずれかの認定を受けていること
Ⅱ型 事業再編・事業統合支援型
【補助内容】
Ⅱ型:事業再編・事業統合支援型 | 補助率 | 補助上限額 | 上乗せ額 |
---|---|---|---|
原則枠 | 1/2以内 | 450万円 | +450万円(合計上限額900万円) |
ベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠 | 2/3以内 | 600万円 | +600万円(合計上限額1,200万円) |
Ⅱ型:事業再編・事業統合支援型は「M&Aによる事業再編・事業統合の後に新たな取り組みを行った場合に、その経費の一部を補助する」ものとなっています。具体的に言えば
- 事業譲渡
- 株式譲渡
- 合併
- 会社分裂
- 株式移転
- 株式交換
等のケースが該当します。
上乗せ対象であるベンチャー型事業承継枠や生産性向上枠の条件は同じですが、用途に関しては「廃業登記費用」や「解体費」等の他に「原状回復及び移転・移設費」がⅡ型に限定して認められています。
事業承継補助金の補助対象者
事業承継補助金の補助対象者は「事業承継の要件を満たす中小企業者及び個人事業主」となっています。満たすべき要件は以下の7つです。
- 日本国内で事業を営む者
- 地域経済に貢献している者
- 暴力団などの反社会的勢力ではない者、あるいはその関係性もない者
- 法令順守上の問題を抱えていない者
- 経済産業省から補助金指定停止措置が講じられていない者
- 匿名性を確保しつつ公表される場合があることに同意する者
- 補助事業の調査やアンケートなどに協力できる者
<中小企業の定義>
資本金額または出資金額 | 常勤従業員数 | |
---|---|---|
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
ただし以下の業種は特例で別個に要件が定められています。
- ゴム製品製造業:資本金3億円以下または従業員900人以下
- 旅館業:資本金5,000円以下または従業員200人以下
- ソフトウエア業・情報処理サービス業:資本金3億円以下または従業員300人以下
事業承継補助金の対象経費
事業承継補助金の対象経費は、新しい取り組みに関わる「事業費」および、それまでの事業から転換するための「廃業費」となっていますが、以下の要件を満たし、かつ事務局が適切と認めたものに関しては対象経費として認められます。
- 使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
- 事業を承継する者が交付決定日以降、補助事業期間内に契約・発注を行い支払った経費(原則として、被承継者が取り扱った経費は対象外)
- 補助事業期間完了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額、支払等が確認できる経費
<具体的な補助対象経費>
事業費 | 人件費、店舗等の借入費、設備費、原材料費、知的財産権等関連経費、謝金、旅費、マーケティング調査費、会場借料費、外注費、委託費 |
---|---|
廃業費 | 廃業登記費、在庫処分費、解体・処分費、原状回復費、移転・移設費用(※) |
※移転・移設費用はⅡ型のみ対応可能
まとめ
- 事業承継補助金は事業承継における投資を積極的にサポートする補助金
- 事業承継補助金は最大で1,200万円まで補助金が交付される
- 人件費や設備費、廃業登記費も補助対象経費として認められている
事業承継を行った企業は本補助金が利用可能か一度検討されてみてはいかがでしょう。
新しい経営者に代わってこれから事業を再拡大していこうとしている人は、本補助金のような国が用意した制度を利用して、効率よく投資を行っていくことが重要です。
もし本補助金について検討したいという人は、まず顧問税理士かお近くの税理士事務所に相談されることをおすすめします。