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「節税」と「役員報酬」の関係性について

「節税」と「役員報酬」の関係性について

「役員報酬を上手く利用して節税したい」
「役員報酬の適正額っていくら?」

このような不安や疑問を抱えている人は少なくありません。

結論から言いますと、役員報酬を上手く利用することで効率的に節税することが出来ます。

しかし、取扱いが難しく、適正な役員報酬を計算できなければ逆に損をしてしまう可能性もあるため注意が必要です。

そこで今回は「節税」と「役員報酬」の関係性について徹底的に解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

役員報酬とは

役員報酬とは、会社の役員が受け取る給与のことです。

役員報酬には5つのルールがあるため、まずはそのルールについて確認しておきましょう。

会社設立後3か月以内に決める

役員報酬は、会社設立後3か月以内に決定しなければいけません。

売上や利益の見込みがないまま決定するのは難しいかもしれませんが、この期限を過ぎると役員報酬の設定が出来ないため注意が必要です。

毎月同額であること

役員報酬は毎月決定した額を同額支払う必要があります。

これは額面の金額と手取の金額が同一であることも必要ですので、控除の内容や手当等を変更することは出来ません。

変更可能期間

役員報酬は、会社設立時の他に、事業年度から3か月以内であれば変更することが出来ます。

例えば、3月31日が決算の会社であれば、6月30日までに変更をすれば役員報酬の金額を変えることが出来ます。

賞与の支給も事前に届出が必要

役員に賞与を支給する場合は、会社設立後から2ヵ月以内で、翌事業年度以降は事業年度開始または株主総会決議・取締役会議から4ヵ月以内で、役員賞与を決議した株主総会から1ヵ月以内に税務署に届出を行う必要があります。

株主総会決議が必要

役員報酬を支払うためには、原則株主総会の決議が必要になります。

ただし、ほとんどの場合は株主総会で決めるのは役員報酬の総額のみであり、個々の役員報酬は取締役会や代表取締役が決定することが多いです。

役員報酬と節税

役員報酬を高く設定すれば、その分会社の利益が削減されるため、会社としては節税することが出来ます。

しかし、役員報酬が高くなれば役員個人にかかる「所得税」「住民税」、更に会社と折半している「社会保険料」も高くなる点には注意しなければいけません。

結果的に法人税が安くなったものの、個人の税金が高くなり、役員と会社の税負担総額から考えると高くなっていることもあり、逆に損をしている可能性もあります。

では、逆に役員報酬を低くすればいいのかと言えば、もちろんその分利益が大きくなるため、法人税が高くなってしまいます。

つまり、役員報酬は会社の利益や役員個人の生活、税金等を総合的に考慮して、バランス良く決定しなければいけないのです。

節税効果の高い役員報酬の決め方

具体的に、役員報酬を計上する前の法人の当期利益が1,000万円の会社で、役員報酬をいくらに設定すれば、どの程度節税効果があるか、簡単にシミュレーションしてみましょう。

<条件面>

  • 役員報酬計上前利益1,000万円
  • 所得税、住民税の所得税額の社会保険料控除や、基礎控除は簡便に計算
  • その他要素は除外
  • 役員報酬は400万円、600万円、800万円、1,000万円にて計算

<具体的なシミュレーション>

酬設定額 400万円 600万円 800万円 1,000万円
法人税 808,900 463,400 117,900 0
法人事業税 207,000 105,000 26,700 0
地方法人特別税 89,400 45,300 11,500 0
法人都道府県民税 60,400 43,100 25,800 20,000
法人市町村民税 132,900 99,400 65,900 54,500
法人社会保険料 606,800 910,200 1,213,600 1,517,000
法人支出額小計 1,905,400 1,666,400 1,461,400 1,591,500
(利益に対する支出割合) (19.05%) (16.66%) (14.61%) (15.91%)
所得税 70,900 201,100 345,600 495,500
住民税 179,800 310,300 454,900 605,400
個人社会保険料 596,000 894,000 1,192,000 1,490,000
個人支出額小計 846,700 1,405,400 1,992,500 2,590,900
(利益に対する支出割合) (8.46%) (14.05%) (19.92%) (25.90%)
支出額合計 2,752,100 3,071,800 3,453,900 4,182,400
(利益に対する全体支出割合) (27.52%) (30.71%) (34.53%) (41.82%)

参考:さくら会計事務所 役員報酬の適正額

会社と個人のどちらにお金を残すか 役員報酬の設定により、各種税金・社会保険料の社外流出額を最小額に留めることは非常に難易度が高いです。 決算終了後に新しい期の役員報酬について決定しなければなりませんが、将来的な予測をもと …

上記のシミュレーションによれば、会社の税金を最も大きく節税できるのが、役員報酬800万円の場合で、個人の支出を最も大きく抑えられるのが役員報酬400万円の場合だという事が分かりました。

役員報酬計上前利益1,000万円の会社であれば、節税のバランスを考えれば役員報酬600万円程度が良いと言えるでしょう。

もちろん法人と個人のどちらにお金を残したいのかを考慮した上で決めることが重要です。

まとめ

  • 役員報酬を上げると個人の「所得税」「住民税」「社会保険料」が上がる
  • 役員報酬を下げると利益が増え「法人税が増える」
  • 個人の税金や生活費と会社の利益のバランスを考え役員報酬を決定する必要がある

適正な役員報酬については具体的に税額の計算をすることが重要になります。

もし会社に顧問税理士がいる場合は、一度相談してみるのが良いでしょう。

会社の規模が大きくなって利益が増えた場合、教育費などの生活費が増え役員報酬を増額したい場合等様々なターニングポイントで役員報酬を見直ししていくようにしましょう。

様々な観点から役員報酬を設定していくことが大切になります。

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