「個人事業主で所得税が0円になる条件は?」
「所得税の具体的な計算方法について知りたい!」
このような疑問を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、所得税には様々な所得控除制度があるので、所得税が0円になるケースは少なくありません。
所得控除は自己申告制度ですので、利用できる控除についてしっかり把握しておくことが重要ですし、自分がいくら所得税を支払う必要があるのかを把握しておくことも、資金繰りを考える観点から重要になります。
今回は個人事業主の所得税が0円になる条件や計算方法について紹介します。
【目次】
所得税が0円になる条件
個人事業主の人が、所得税0円になる条件は以下の3のいずれかを満たす場合です。
- 赤字決算
- 所得金額よりも所得控除額が大きい
- 青色申告の繰越欠損控除がある
それぞれについて詳しく説明していきましょう。
赤字決算
所得税はそもそも所得がある人に対して課せられる税金であるため、所得がない、つまり赤字決算した人には所得税の納付義務はありません。
尚、赤字で決算した場合は住民税についても非課税になります。
所得金額よりも所得控除額が大きい
所得控除額とは所得金額から差し引くことが出来る金額のことです。
所得控除には以下のようなものが挙げられます。
- 基礎控除
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄付金控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 青色申告特別控除
- 事業専従者控除
事業で得た収入(事業収入・売上)から、事業収入を得るために必要になった原価(売上原価)及び経費(人件費や交通費等)を差し引いた額が所得金額になります。
そこから事業専従者控除や青色申告特別控除を差し引いた額が、個人事業主の所得金額になります。
個人事業主の所得金額は、一般のサラリーマンが受け取る給与の「総支給」に当たります。
所得金額から基礎控除や生命保険控除、社会保険料控除などを差し引いた額が課税所得額となります。
先ほど説明した通り所得税は所得金額がある人に課税されることから、この課税所得額が0円になった場合、つまり所得金額よりも所得控除額が大きくなった場合は所得税の納付義務がなくなります。
青色申告の繰越欠損控除がある
青色申告している個人事業主の人は、3年間赤字(控除前所得金額)を翌年以降に繰越出来る「青色申告の繰越欠損控除」が利用できます。
青色申告の繰越欠損控除を具体的に説明していきましょう。
○令和2年12月期確定申告
・控除前所得▲300万円 次期繰越
○令和3年12月期確定申告
・控除前所得100万円 ※100万円-300万円(前期繰越金)=-200万円(次期繰越金)
⇒課税所得0円
○令和4年12月期確定申告
・控除前所得150万円 ※150万円-200万円(前期繰越金)=-50万円(次期繰越金)
⇒課税所得0円
○令和5年12月期確定申告
・控除前所得200万円 ※200万円-50万円(前期繰越金)=150万円
⇒課税所得150万円
初期投資が多くかかる事業を行う場合、初期の赤字を時期に繰り越すことが出来れば次期以降の所得税額を大幅に削減出来ます。
注意が必要なのは、繰越欠損控除は「青色申告」している必要があります。
青色申告は事前に税務署からの承認を得なければいけないことから、勝手に繰越欠損控除を利用することは出来ません。
事前承認の方法について不安がある人は一度税理士に相談することをおすすめします。
個人事業主の所得税の計算方法
個人事業主が事業を行った際に課税される税金は所得税中でも「事業所得」と言われています。今回はこの事業所得の計算方法について確認しておきましょう。
ここでは、所得が“事業所得”のみの場合を想定して、所得税額の計算方法について説明していきます。
<事業所得の計算方法>
- 事業所得金額=総収入金額―必要経費
- 課税所得=事業所得金額―所得控除額
課税所得が算出出来たら、以下の所得税の課税基準に当てはめて所得税額を計算します。
【所得税額計算表】
課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円未満 | 20% | 427,000円 |
695万円超 990万円未満 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
○課税所得が700万円の個人事業主の場合
・700万円×20%-427,000円=973,000円
実際に納付する所得税額は973,000円となります。
所得税の計算は税理士に相談する
所得税の計算をする上で重要なのは、給与所得や雑所得、事業所得は総合課税されてしまうという点です。
【総合課税】
総合課税制度とは、各種の所得金額を合計して所得税額を計算する方法
事業所得のみであれば自分で計算することも可能ですが、その他の収入がある人は計算方法に注意が必要です。
【総合課税される所得】
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 給与所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
その他総合課税される所得があり、具体的に所得税額について計算してほしい人は、税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
- 所得税は課税所得が0円以上に時に課税される
- 青色申告の繰越欠損控除を利用すれば時期以降の所得税を大幅に削減できる
- 事業所得は給与所得や雑所得と同様総合課税されるため、具体的な計算は税理士に相談する
事業所得がいくら必要になるかを把握しておくことは、今後の資金繰りを考える観点からも重要です。
所得税の計算はシンプルですので、やろうと思ったら自分でも計算出来ます。
しかし、利用できる控除を知らなかったり、総合課税される所得について計算が分からなかったりする場合はお近くの税理士に相談することをおすすめします。
無料相談会等もありますので、一度訪ねてみてはいかがでしょうか。