「決算書に記載されている繰延資産って何?」
「流動資産や固定資産と何が違うの?」
このような疑問や不安を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、繰延資産の考え方は、流動資産や固定資産とは大きく異なります。
その上中小企業の決算書では繰延資産が計上されないケースも少なくありません。
しかし、会社の決算を正しく行うためにはかかった経費をしっかり決算書に記載する必要があります。
繰延資産についてしっかり理解を深め、正しい決算書の作成が出来るように心がけましょう。
そこで今回は、決算における繰延資産について徹底的に解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
決算における繰延資産とは
繰延資産という科目は、その他の資産科目の「流動資産」「固定資産」と比較しても、考え方が大きく異なるため、しっかり理解しなければ正しく決算することが出来ません。
実は繰延資産は、資産としての実態があるというより、その本質は「費用」であると考える方が正しいです。
しかし、費用の中にはすぐに効果が発揮されるものもありますが、長期的な目線が無ければ効果が発揮しないものもあります。
そのため、その効果が発揮されるまで資産として計上し、適切な期間で費用として計上することが会計上好ましいとされています。
このような費用を繰延資産として計上することで、費用の期間分配が可能となります。
以上のような説明ではよく分からないという人も多いと思います。ここから更に詳しく解説していきましょう。
繰延資産の種類
繰延資産には
- 会社法上の繰延資産
- 税法上の繰延資産
以上の2つの種類に分けられます。
詳しく解説していきましょう。
会社法上の繰延資産
会社法上の繰延資産には以下のようなものが含まれます。
科目 | 内容 |
---|---|
創立費 | 登記・定款作成など会社設立に要した費用 |
開業費 | 会社設立後事業開始までに要した広告費・通信費・光熱費など |
開発費 | 新技術開拓や新市場開拓に要した費用 |
株式発行費 | 株式発行に要した費用 |
社債発行費 | 社債発行に要した費用 |
以上のような、科目が繰延資産として計上されます。
尚、中小企業の経理においては、これらの資産の計上は任意項目とされています。
つまり、中小企業における決算書では、これらの項目が記載されていないケースも多く、繰延資産計上ではなく、期中の経費として計上されているケースも少なくありません。
税法上の繰延資産
税法上の繰延資産には以下のようなものが含まれます。
内容 | 詳細 |
---|---|
公共的・共同施設に支出した費用 |
|
権利金等 |
|
広告宣伝用資産を贈与したことによる費用 |
|
その他自己が便益を受けるための費用 | ― |
税法上の繰延資産は会社法上の繰延資産とは違い、繰延資産としての会計処理が強制されています。つまり、これらの費用は必ず繰延資産として計上しなければいけません。
不動産賃貸借契約時の礼金や権利金が処理されるケースや、フランチャイズ契約の加盟金が記載されることが多いです。
繰延資産と減価償却
繰延資産は期間分配を行う考え方に成り立っているので、固定資産と同様に減価償却を行うことになります。
繰延資産の減価償却期間は会社法上の繰延資産と税法上の繰延資産で異なるため注意が必要です。
会社法上の繰延資産
会社法上の繰り延べ期間は、均等償却を選択した場合は以下の償却期間が適用となります。
- 創立費/開業費/開発費:5年
- 株式交付費:3年
- 社債交付費:社債の償還期限内
尚、会社法上の繰延資産は任意償却も認められています。
つまり、自分の好きな時に好きなだけ費用計上していいという特徴があります。
税法上の繰延資産
税法上の繰延資産に関しては償却期間が複雑になっているため、代表的な例のみ取上げすることとします。
種類 | 細目 | 償却期間 |
---|---|---|
公共的施設の設置又は改良のために支出する費用 | その施設又は工作物がその負担した者に専ら使用されるものである場合 | その施設又は工作物の耐用年数の7/10に相当する年数 |
上記以外の施設又は工作物の設置又は改良の場合 | その施設又は工作物の耐用年数の4/10に相当する年数 | |
共同的施設の設置又は改良のために支出する費用 | その施設がその負担者又は構成員の共同の用に供されるものである場合又は協会等の本来の用に供されるものである場合 |
|
商店街等における共同のアーケード、日よけ、アーチ、すずらん灯等負担者の共同の用に供されるとともに併せて一般公衆の用にも供されるものである場合 | 5年(その施設について定められている耐用年数が5年未満である場合には、その耐用年数) |
詳しくは国税庁のHPに記載されています。