今回はM&Aにおける失敗について解説するとともに、実際に今まで起こったM&Aの失敗事例をいくつか紹介します。
M&Aはどんな大きな企業であっても様々な要因で失敗することがあります。
失敗事例を多く参考にすることで、今後自分がM&Aを行う際に役立つ可能性があるかもしれません。
大きく損をしないように、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
M&Aにおける失敗とは
M&Aにおける失敗とはどのようなケースを言うのでしょうか。
結論から言うと、以下のようなケースが一般的に失敗したと考えられます。
- 買収後の粉飾発覚
- のれんの減損損失
- 企業イメージの悪化
- 投資効果が合わない
それぞれについて詳しく説明していきましょう。
買収後の粉飾発覚
M&Aによる企業買収を行う際には、対象企業に対してデューデリジェンスを行うこととなります。
<デューデリジェンスとは>
デューデリジェンスとは、企業の決算内容や簿外債務、簿外資産を含めた財務状況や、コンプライアンスに関する情報などを専門家に依頼して事前に調査することです。
しかし、デューデリジェンスが不十分であったために、買収後に対象企業の粉飾、簿外債務、不正会計、コンプライアンス違反などが発覚し、買収したがために買手企業の経営が悪化してしまうケースがあります。
買収後の粉飾については、最悪の場合買手企業が経営破綻にまで追い込まれるケースもあります。
そのため、M&Aに関しては事前のデューデリジェンスが何よりも重要で、徹底した調査を行わなければいけません。
不十分な調査は、自社の経営そのものを脅かす結果となります。
のれんの減損損失
M&Aを行う際は、買収企業の「のれん代」も買収金額に加算されます。
<のれん代>
のれん代とは、企業の「ブランド力」「事業そのものの価値」「人脈」など、企業の収益に関わる決算書に数字として表れない要素を総合的に判断して考慮されたものです。
のれん代は、数字として表れない分、評価額を算出するのが非常に難しいという側面があります。
万が一評価しただけのシナジー効果が表れなかった場合、のれん代を減損処理によって損失計上する必要があるからです。
M&A実施後、買手企業はのれん代を減価償却費として計上していくこととなりますが、のれん代の損失計上により、期中に多額の損失を計上しなければならない場合があり、買手企業に損害を与える可能性があります。
のれんに関しては、買収前に慎重に精査する必要があります。
企業イメージの悪化
M&Aは財務やのれん代の問題だけではなく。買収企業のコンプラ問題等により、買収企業のイメージを悪化させるケースがあります。
特に近年はコンプライアンスのみならず
- ハラスメント問題
- 環境汚染問題
なども企業イメージを大幅に悪化させる原因となります。
また「訴訟リスク」などもはらんでいる可能性もあり、事前に社内外を含めた徹底的な調査を行わなければなりません。
尚、国内M&Aよりも、文化や宗教などが異なる海外M&Aを行う場合は、こういった問題が起こりやすいため注意しなければいけません。
投資効果が合わない
M&Aを行ったものの、投資効果が合わないことで、M&Aで使用した投資金額を回収できないという失敗も存在します。
投資効果が合わなくなる原因は、買収を希望する企業が複数社いる等、価格が吊り上がった場合や、事前のデューデリジェンスが不十分であり高値掴みする場合があります。
<高値掴み>
実際の評価額よりも高い金額でM&Aを実施すること
具体的なM&Aの失敗事例
ここからは、具体的なM&Aの失敗事例を紹介していきます。
パナソニックのM&A失敗事例
大手家電メーカーで皆さんご存じのパナソニックですが、2009年に6,600億円もの資金を投入して三洋電機を買収しました。
しかし、三洋電機の主力事業であった民生用リチウムイオン電池の価値が、円高をはじめとする周辺環境悪化の影響を受けて、大きく毀損してしまったことから、買収からたった2年で三洋電機の企業価値が半分近く下落することとなりました。
結果的に、のれん代の内2,500億円もの損失を計上することとなりました(買収当時ののれん代5,180億円)。
丸紅のM&A失敗事例
大手総合商社として有名な丸紅ですが、2012年に事業拡大を目指しアメリカに本社がある穀物会社がガビロンを2,800億円もの資金を投入して買収しました。
しかし、買収後の想定していたスケジュールでシナジー効果を得られなかったことから、1,000億円ののれん代の内、500億円を減損損失出す結果となりました。
三菱地所のM&A失敗事例
三菱地所は1989年にアメリカのマンハッタンにあるロックフェラーセンターを約2,200億円で買収しました。
しかし、その後のバブル崩壊による不動産価格の暴落により、三菱地所は莫大な負債を抱えることとなり、結果的に1,500億円の特別損失を計上した後、購入した物件の多くをアメリカに売り戻す結果となりました。