「繰越欠損金って何?」
「M&Aにおける繰越欠損金の役割について知りたい」
このような疑問や不安を抱えている人は少なくありません。
結論からいますと、繰越欠損金とは「過去の欠損金(赤字)を将来に繰り越す制度」のことです。
実は、法人税は年度毎に計算されるため、仮に今期赤字で課税所得が0円だったとしても、来年黒字であれば、その利益に対する税金の支払が生じることになります。
しかし、青色申告を行っている法人では、過年度に発生した欠損金を翌期以降に繰り越すことができます。
このように将来にわたって繰り越す欠損金を「繰越欠損金」と言います。
繰越欠損金を使うことで、将来の黒字と相殺することが可能となるため、赤字になったとしても将来の黒字による法人税の圧縮に繋がるというメリットがあります。
繰越欠損金に関しては、一点だけ注意したい点があります。
実は、繰越欠損金を使うためにはいくつか条件を満たさなくてはいけません。
その条件について知らなければ大きく損をしてしまう可能性があります。
そこで今回は、繰越欠損金の扱いと、繰越欠損金を利用するための要件について徹底的に解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
繰越欠損金の限度額
結論からいますと、資本金が1億円以下の会社であれば繰越欠損金の限度額はありません。
ただし、以下に該当するケースは繰越欠損金に限度額が設けられています。
- 資本金が1億円を超える企業
- 資本金が5億円以上の会社に完全支払されている子会社
対象となる事業年度によって繰越欠損金の使える気学が50~80%まで制限されるため注意する必要があります。
繰越欠損金とM&A
繰越欠損金を持っている会社がM&Aにより合併となった場合、原則としてその繰越欠損金を引き継ぐことは出来ません。
ただし、その被合併企業が「適格合併」となる場合には、繰越欠損金をM&A後に引き継ぐことが可能となります。
適格合併については後ほど紹介します。
M&Aにおける繰越欠損金の取り扱い
M&Aの際に繰越欠損金を上手く使うことで、税金の圧縮に役立つ可能性があります。
これからは想定される様々なケースでの欠損金の取り扱いについて解説していきましょう。
買収企業の業績を立て直し黒字化した場合
赤字企業を立て直して黒字化した場合に関しては、買収した企業の繰越欠損金を利用した節税を行うことが出来ます。
買収企業の清算
買収企業を清算した場合、100%出資の支配関係から5年を経過した後に清算した場合に限り、繰越欠損金を全額引き継ぐことが可能になります。
仮に支配関係開始から5年以内に清算してしまった場合は、繰越欠損金の引継ぎには制限がかかるため注意が必要です。
繰越欠損金のある子会社を合併する場合
繰越欠損金のある子会社を合併する場合は、原則繰越欠損金は引き継げません。
しかし、一定の要件をクリアすると繰越欠損金を引き継げる場合があります。
適格合併要件とは?
それではここから、適合合併の要件について解説していきます。
適格合併となるかどうかの要件は以下のようなものがあります。
- 金銭等不交付要件
- 完全支配関係(支配関係)継続要件
- 従業者引継要件
- 事業継続要件
- 事業関連性要件
- 事業規模要件、または、経営参画要件
- 株式継続保有要件
それぞれ簡単に詳しく説明していきましょう。
金銭等不交付要件
金銭等不交付要件とは、M&Aの対価として、買収先企業やその親会社などに対して、株式以外の資産の交付を受けていないことが要件となります。
株式以外の金銭等の交付を受けている場合は、適合合併とは認められません。
完全支配関係(支配関係)継続要件
M&A前にあった支配関係がM&A後も継続することが要件となります。
従業者引継要件
M&A後に、M&A直前の従業員の内、80%以上が従事し続ける見込みがあることが要件となります。
事業継続要件
M&A前に売却先企業が行っていた事業をM&A後も買収企業によって引き続き行われることが要件となります。
事業関連性要件
売却先企業の主な事業及び、それに関係する買収先企業の事業について、売上・従業員数・資本金額のうち、いずれかひとつが、概ね5倍程度を超えないことが要件となります。
事業規模要件、または、経営参画要件
M&Aの売却先企業と買収先企業の特定役員が、それぞれM&A後に特定役員として存続し続けることが要件となります。
なお、特定役員とは以下のいずれかを指します。
- 社長
- 副社長
- 代表取締役
- 代表執行役
- 専務取締役
- 常務取締役 など
株式継続保有要件
株式継続保有要件とは、被合併法人の株式を50%超保有している株主がいる場合に、合併にあたって交付される合併法人などの株式を、その支配株主が継続して保有する見込みであることが要件となります。
以上に紹介した7つの要件を満たすことによって、欠損金を繰越すことが可能となり、税金圧縮が可能となります。