「相続税は二重課税される可能性があるって本当?」
「どうすれば二重課税されなくて済む?」
このような疑問や不安を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、相続する時期によっては同一資産に対して「贈与税」と「相続税」が二重課税される可能性があります。
二重課税を防ぐためには自主的に申告を行う必要があります。
自らが二重課税を訂正しなければそのまま税金が引かれてしまう点に注意が必要です。
そこで今回は、相続税の二重課税をテーマに、その内容や二重課税を防ぐ方法などを紹介していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
相続税の二重課税が起こる理由
相続税は「被相続人の相続が発生した時から数えて三年以内の贈与は相続税の対象」となることが定められています。
つまり、被相続人が死亡する3年前までの期間に贈与をしている場合は注意が必要です。
贈与税の支払は、贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日までに行うため、既に贈与税の支払いを完了している資産に関しても、相続時に相続税が二重で課税される可能性があります。
相続税の二重課税を防ぐ方法
相続税の二重課税を防ぐための方法としては、既に支払った贈与税を相続税額から控除することが必要になります。
これを「贈与税額控除」といいます。
相続財産について既に贈与税の支払いを終えているものに関しては、贈与税額控除を利用して相続税の二重課税を防ぐようにしましょう。
相続税の二重課税を防ぐ贈与税額控除が使える条件
二重課税を防ぐ贈与税額控除ですが、利用するには3つの条件があり、その条件を全て満たしている必要があります。
- 相続財産を受け取ること
- 3年以内に贈与を受けたこと
- 贈与税を既に納めていること
相続財産を受け取り、既に贈与税を支払っている分があれば、贈与税額控除を利用できる可能性があります。
一度お近くの税理士に相談されることをおすすめします。
尚、被相続人から受けた贈与のみ対象となります。
他人から受けた贈与に関して、贈与税額控除を適用することは出来ませんので注意が必要です。
それぞれ詳しく説明していきましょう。
相続財産を受け取ること
贈与税額控除を利用できるのは、相続や遺贈によって財産を取得した人のみです。
つまり、そもそも相続財産を受け取らない人は対象とならないため注意が必要です。
ここで注意したいのが、贈与税額控除の適用条件は「相続財産を受け取っている人」であることから、「法定相続人である」ことは条件ではありません。
孫や内縁の妻などの法定相続人ではなない人が、遺言書などによって財産を引き継ぐ場合は、贈与税額控除の対象となります。
3年以内に贈与を受けたこと
被相続人が死亡した日から遡って3年前の同じ日以降に贈与を受けたことが条件となります。
例えば、令和4年4月25日に死亡した場合は、平成31年4月25日~令和4年4月25日までの範囲で行われた贈与が対象となります。
平成31年4月24日以前に受けた贈与は、そもそも相続税の対象として課税されないことから、贈与税額控除の対象とはなりませんので注意が必要です。
相続前3年以内に暦年贈与により非課税で贈与を受けているケース
相続前3年以内の贈与は、仮に暦年贈与で年間110万円の贈与であっても相続税の課税対象となります。
相続税は全ての相続財産を合算して求められるため、生前にうけた贈与であっても相続前3年以内であれば相続税の課税対象となります。
つまり、暦年贈与を利用し非課税で受け取った資産に関しても遡って課税されるという事です。
もちろん贈与税の支払いをしていない資産であることから、贈与税額控除を利用することは出来ません。
贈与税を既に納めていること
贈与税額控除を利用するためには、そもそも贈与税を支払っていることが必要です。
何故なら、贈与税額控除は、贈与税と相続税の二重課税を避けるための方法だからです。
そこで注意が必要なのは、贈与税額控除は「特例の有無ではなく贈与税を納めたかどうかでしか判断されない」という事です。
特例を用いて非課税で贈与をしていたとしても、相続前3年以内に行われた贈与に関しては相続税の対象となるため注意して下さい。
これは先ほどの暦年贈与によって取得した財産があるケースと同様の考え方になります。
【贈与税の特例】
贈与税の特例 | 非課税枠 |
---|---|
おしどり贈与 | 2,000万円まで |
教育資金の一括贈与 | 1,500万円まで |
結婚・子育て資金の一括贈与 | 1,000万円まで(うち結婚式は300万円まで) |
住宅取得資金の贈与 | 500万円~1,000万円(条件による) |
以上のような贈与税の特例を利用して生前贈与を行っている資産がある場合は注意が必要です。
実は相続税の課税財産だったのにも関わらず申告漏れがあれば、延滞税や無申告加算税などがペナルティとして科せられる可能性があります。
贈与によって資産を受け取っている人は、一度お近くの税理士に相談するなどしておくことが大切です。