「相続の時に株式の評価はどうすればよい?」
「上場株式と非上場株式で評価は変わる?」
このような不安や疑問を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、相続時の株式評価方法は決まっており、決められた方法により正確な評価を出す必要があります。
決められた評価方法を採用しない場合、多く相続税を支払う事や、脱税として摘発される可能性もあります。
今回は相続税と株式評価について解説していきます。
【目次】
相続時の株式評価
相続時の株式評価は
- 上場株式
- 非上場株式
以上のいずれかで方法が変わってきます。
上場株式の株式評価
上場株式の相続税評価額は以下のいずれかで、“一番低い価額”を基準に算出します。
- 相続が発生した日の最終価額
- 相続が発生した月の最終価額の平均額
- 相続が発生した月の先月の最終価額の平均額
- 相続が発生した月の前々月の最終価額の平均額
※最終価額とは、取引の最後についた価額のことをさします。
なお、全て同じ時期で評価する必要がありませんが、上場株式を複数保有している場合は、その株式ごとに最も低い金額で評価する必要があります。
また、評価に際しては円未満の数字が発生した場合、切り捨てとなることに注意しましょう。
株式評価の具体例
では、上場株式の評価を、具体的に例を用いて行ってみましょう。
<具体例>
被相続人の相続発生が7月15日で、1,000株保有しています。
株式評価は以下の通りです。
- 7月15日の最終価額:4,000円
- 7月の最終価額の平均額:4,500円
- 6月の最終価額の平均額:3,800円
- 5月の最終価額の平均額:4,200円
この場合は、6月の最終価額である3,800円が、4つの価額のうち最も低い価額となっています。
よって1株当たりの評価額は3,800円になり、1,000株保有している場合は、1,000株×3,800円=3,800,000円となります。
相続発生日の最終価額が無い場合
相続発生日が土日祝日の場合は、市場が開いていませんので最終価額の発表がありません。
この場合は、相続が発生した日に近い日の最終価額を基準に算出します。
<具体例>
- 日曜日に相続発生し月曜日が平日の場合:月曜日
- 土曜日に相続発生した場合:金曜日
- 三連休の中日に相続発生した場合:連休前と連休後の最終価額の平均額
非上場株式の株式評価
非上場株式の株式評価は以下のいずれかの方法で行います。
- 類似業種比準方式
- 純資産価額方式
- 配当還元方式
それぞれについて詳しく解説していきます。
類似業種比準方式
類似業種比準方式とは、「評価の対象となる株式」と事業内容が類似している上場会社の株式価額を参考にして非上場株式の1株あたりの評価額を決定する方法です。
ただ、単純に業種や規模が似ているというだけで評価額を同じにすることは正しい評価とは言えません。
一般的に非上場株式は非上場株式より低い評価となります。
また、本来であれば、類似業種の具体的な数字をいくつも算出して1株当たりの評価を算出していく必要がありますが、全ての要素を検討するのは困難を極めるので、原則「配当」「利益」「純資産」に着目して評価を行うことになります。
<計算式>
・評価会社の1株当たりの配当額÷類似業種の1株当たりの配当額 ― ①
・評価会社の1株当たりの年利益金額÷類似業種の1株当たりの年利益金額 ― ②
・評価会社の1株当たりの純資産額÷類似業種の1株当たりの純資産額 ― ③
・①+②+③=評価額
尚、評価の安全性を図るために、会社の規模により以下の調整を行います。
- 大会社:70%
- 中会社:60%
- 小会社:50%
純資産価額方式
純資産価額方式とは、課税時期現在における資産および負債を基に、1株当たりの価額を算出する方法です。
<計算式>
{(相続税評価額による資産の金額―相続税評価額による負債の金額)―法人税等調整額}÷発行済株式数=評価額
※法人税等調整額=(相続税評価額による純資産価額-帳簿価額による純資産評価額)×法人税等相当額控除割合
尚、法人税等相当額控除割合は、国税庁のホームページに掲載されています。
令和3年8月現在は37%。
配当還元方式
配当還元方式とは、評価会社から受け取る配当金を基に1株当たりの評価額を計算する方法です。
<計算式>
(年平均配当金額÷資本金等の額÷50円)÷10%×{資本金等の額÷(発行済株式-自己株式数)÷50円}=評価額
※年平均配当金額とは(直前期の1年間の配当金+直前々期の1年間の配当金)÷2で算出します。
まとめ
- 上場株式は4つの評価方法か算出し一番低い価格を参考にする
- 非上場株式は評価が難しいため、「配当」「利益」「純資産」に着目して評価する
相続時の株式評価方法は上場株式と非上場株式で方法が変わります。
特に非上場株式の評価は計算しにくい部分が多いため、計算に自信がない人は専門家である税理士に相談することをおすすめします。
特に相続株式が複数になるケースは計算も複雑になるため、正確な申告を心掛けるためにも税理士に依頼した方が安心です。