「廃業したいけど資産で相殺しきれない負債がある」
「清算後残った借金はどうなる?」
このような不安や疑問を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、負債が残った場合で経営者が保証人になっている場合は、債務が移る可能性が高いです。
廃業を検討する上で借金の有無は重要になるので、借金の取り扱いについて事前にしっかり把握しておくようにしましょう。
【目次】
廃業・清算した後残った借金はどうなる?
廃業・清算した後に残った借金はどうなるのでしょうか?
前提として、借金をしていたのが「法人」か「個人」なのかによって対応が変わってきます。
<法人の場合>
所持する設備や在庫等の資産を売却し、その上で現預金と相殺しても借金が残る場合には、廃業後も借金を完全に清算出来ない可能性が高いです。
また、中小企業の経営者である場合は、法人へ貸付した融資に関しても連帯保証を負っている可能性も高く、法人に借金が残った場合はそのまま連帯保証人である経営者に債務が移ることとなります。
<個人事業主の場合>
個人事業主の場合は借入している本人が個人であることから、廃業した後に残った借金はそのまま本人が引き継ぐこととなります。
廃業・清算後に残った借金の対処方法
では廃業・清算した後に残った借金はどうすればよいでしょうか。
考えられる対処法としては以下の3つが挙げられます。
- 自力での返済
- 債権者との交渉でリスケジュール
- 法的整理
それぞれについて詳しく説明していきましょう。
自力での返済
返済する本人の個人資産があれば、預金や資産の売却によって残った借金を返済することとなります。
ここで注意が必要なのは、事業資金を借入した際に個人の所有不動産を担保に取っていた場合です。
廃業に伴って金融機関や保証会社が担保権を行使した場合には、自宅が競売にかけられる可能性が高く、自宅を手放すこととなります。
現在借入している場合は融資の条件が付されていないか、契約書等を再度確認し、廃業前に金融機関に相談する方が無難でしょう。
債権者との交渉でリスケジュール
返済できるだけの資産がない場合は、債権者と交渉して返済期間を延ばすなどリスケジュールが求められます。
交渉の結果次第では長期分割返済に応じてもらえる可能性があります。
ただし、ここで注意すべき点は「必ずしも分割払いに応じてもらえる訳ではない」という点です。
廃業・清算した場合は期限の利益の当然喪失事由に該当するため、本来であれば債権者から一括での返済を求められてしまいます。
【期限の利益】
債務を負う時、その履行に期限を定める場合は、決められた期限まで債務を履行する義務を持たないこと。
もちろん、債権者としても返せなくて破産されてしまった方が不利益なケースも十分にあるため、基本的には交渉に応じてもらえるケースが多いです。
尚、金融機関債務が代位弁済されて債権が移った場合でも、同様の対応となることが考えられます。
<保証協会の場合>
保証協会の場合、担保権の行使後は基本的に分割返済に応じるケースが多いです。
例えば1万円を120回払いで120万返済する、といったような長期での返済に応じることも、個別ケースとしては存在するようです。
ただし保証協会が「借金の減額」に応じる可能性は少ないです。リスケジュールをもってして返済可能な金額を交渉することとなります。
<サービサー等の場合>
サービサーとは、不良債権を額面より低く買い取って債権回収を行う業者のことです。
サービサーの場合もリスケジュールによって返済していくことが前提ですが、そもそも債権を安く買い取っているため、借金の減額に応じてくれるケースもあるようです。
どちらのケースにしても、ご自身での交渉が難しいと判断される場合は、弁護士を通じて行う等の対策を講じた方が良いでしょう。
法的整理
法的整理とは、破産や個人再生等の法的に行う債務整理を言います。
破産や個人再生では借金の減額もしくは減免をすることが可能になります。
一方で一定以上の資産を売却しなければいけなくなる等の制約がありますので注意が必要です。
【法的整理】
破産 | 個人再生 | |
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メリット |
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デメリット |
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まとめ
- 清算時残った借金については連帯保証人に引き継がれる
- 期限の利益喪失事由に該当した場合一括返済が求められる。ただし一般的にリスケジュールに応じてくれる
- 個人負債が膨らんだ場合は法的整理も検討する
会社を廃業・清算する場合は借金がどの程度残るのかしっかり把握しておかなければなりません。
清算は基本的に税理士に依頼することが多いため、依頼する税理士にどの程度借金や負債が残るのか一度計算してもらった上で廃業を検討するようにしましょう。
廃業することで結局経営者に対する借金が増えて、廃業する意味がそもそも無くなってしまうことも考えられます。
税理士と共に最善の手段について検討することが大切です。