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赤字決算した場合資金繰りはどうなる?赤字決算にメリットがあるって本当?

赤字決算した場合資金繰りはどうなる?赤字決算にメリットがあるって本当?

「赤字決算してしまったけど資金繰りはどうなる?」
「赤字決算してしまってもメリットがあるって本当?」

このような疑問や不安を抱えている人は少なくありません。

結論から言いますと、赤字決算をしてしまっても今すぐに会社が倒産するという事は考えにくいでしょう。

赤字決算してしまった場合は、まず赤字決算で受けられるメリットを享受し、翌期以降黒字転換できるようにしっかり対応することが重要です。

ただし、赤字決算で一番問題となるのでが「資金繰り」の問題です。

資金繰りが上手くいかなければ会社は倒産してしまうため、赤字決算となった場合、まずは資金繰りの安定化を図りましょう。

今回は赤字決算と資金繰りについて、赤字決算してしまった場合に受けられるメリットを交えながら紹介していきます。

ぜひ最後までご覧ください。

赤字決算とは何か

赤字決算とは、費用が収益を上回り、損失が生じていることを言います。

逆に収益が費用を上回り、利益が生じている状態を黒字決算と言います。

企業を長年経営していくと、毎期黒字決算にすることは簡単なことではありません。時には赤字決算で終了する年度もあるでしょう。

勘違いしやすい点は「企業は赤字だからつぶれる」訳ではないという事です。

決算はあくまで一定期間(最長12ヵ月)の業績を表すものであり、直接的に企業の倒産を左右するものではありません。

決算では赤字となった場合でも、現金が減らないケースも実際あります。

現金が枯渇し、支払が滞らない限り企業は倒産しません。逆に黒字であっても現金が枯渇すれば企業は倒産します。

ただし、赤字で決算するということは、事業で収益が上がっていないことには違いはありません。

今後資金繰りが悪化していく可能性もあるため注意は必要です。

赤字決算のメリット

実は赤字決算は必ずしもデメリットだけではありません。いくつか企業にとってメリットとなる側面もあります。

  • 法人税の軽減
  • 繰越欠損控除が利用できる
  • 法人税の還付がある

赤字になれば、上記に記載したようなメリットが受けられます。

それぞれ詳しく説明していきましょう。

法人税の軽減

法人税とは所得に対して課税される税金であることから、課税所得がない赤字の場合、法人税は課税されません。

尚、法人税率は「中小企業かどうか」「所在する市町村」によって変化します。

区分 適用関係(開始事業年度)
平28.4.1以後 平30.4.1以後 平31.4.1以後
普通法人 資本金1億円以下の法人など(注1) 年800万円以下の部分 下記以外の法人 15% 15% 15%
適用除外事業者 19%(注2)
年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20%
上記以外の普通法人 23.40% 23.20% 23.20%
協同組合等(注3) 年800万円以下の部分 15%【16%】 15%【16%】 15%【16%】
年800万円超の部分 19%【20%】 19%【20%】 19%【20%】
公益法人等 公益社団法人、公益財団法人または非営利型法人 収益事業から生じた所得 年800万円以下の部分 15% 15% 15%
年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20%
公益法人等とみなされているもの(注4) 年800万円以下の部分 15% 15% 15%
年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20%
上記以外の公益法人等 年800万円以下の部分 15% 15% 15%
年800万円超の部分 19% 19% 19%
人格のない社団等 年800万円以下の部分 15% 15% 15%
年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20%
特定の医療法人
(注5)
年800万円以下の部分 下記以外の法人 15%【16%】 15%【16%】 15%【16%】
適用除外事業者 19%(注6)【20%(注6)】
年800万円超の部分 19%【20%】 19%【20%】 19%【20%】

【 】は、協同組合等または特定の医療法人が連結親法人である場合の税率です。
(注1) 対象となる法人は以下のとおりです。
(1) 各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるものまたは資本もしくは出資を有しないもの((注5)に掲げる特定の医療法人を除きます。)。ただし、各事業年度終了の時において次の法人に該当するものについては、除かれます。
イ 相互会社および外国相互会社
ロ 大法人(次に掲げる法人をいいます。以下同じです。)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人
(イ) 資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人
(ロ) 相互会社および外国相互会社
(ハ) 受託法人
ハ 100パーセントグループ内の複数の大法人に発行済株式または出資の全部を直接または間接に保有されている法人(ロに掲げる法人を除きます。)
ニ 投資法人
ホ 特定目的会社
ヘ 受託法人
(2) 非営利型法人以外の、一般社団法人および一般財団法人
(注2) 平成31年4月1日以後に開始する事業年度において適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等をいいます。以下同じです。)に該当する法人の年800万円以下の部分については、19パーセントの税率が適用されます。
(注3) 協同組合等で、その事業年度における物品供給事業のうち店舗において行われるものに係る収入金額の年平均額が1,000億円以上であるなどの一定の要件を満たすものの年10億円超の部分については、22パーセントの税率が適用されます。
(注4) 公益法人等とみなされているものとは、認可地縁団体、管理組合法人および団地管理組合法人、法人である政党等、防災街区整備事業組合、特定非営利活動法人ならびにマンション建替組合およびマンション敷地売却組合をいいます。
(注5) 特定の医療法人とは、措法第67条の2第1項に規定する国税庁長官の認定を受けたものをいいます。
(注6) 平成31年4月1日以後に開始する事業年度において適用除外事業者に該当する法人の年800万円以下の部分については、19パーセント(その特定の医療法人が連結親法人である場合には、20パーセント)の税率が適用されます。

引用元:

繰越欠損控除が利用できる

法人が赤字決算となった場合、法人税は課税されません。

また、赤字となった分は翌年以降に繰り越すことが税法上認められているため、今期の赤字を来期の黒字(課税所得)と相殺することが可能となります。これを繰越欠損控除と言います。

繰越欠損控除を利用することで来期に発生する法人税額を抑える効果があり、事業者にとって大きなメリットとなるでしょう。

尚、繰越欠損控除は最長で10年間赤字を繰越しすることが可能となります。

繰越欠損控除の注意点

繰越欠損控除を利用するにはいくつか注意点があります。

まず、資本金1億を超える法人の場合は、赤字が発生した事業年度により控除できる金額に制限が生じます(資本金1億以下の法人に関しては金額の制限がありません。)。

また、青色申告事業者でなければ繰越欠損控除を利用することが出来ないため、白色申告事業者は赤字が出ても来期以降に繰り越すことが出来ないため注意が必要です。

法人税の還付がある

赤字になった場合、法人税の還付を受けることが可能となります。

還付金額は、前期に支払った法人税額が上限となっています。

前期より前に支払った法人税は還付の対象とならないため注意が必要です。

尚、法人税の還付に関しては、

  • 資本金の額が1億以下の中小企業
  • 青色申告事業者

のみ適用されるため条件に当てはまるかどうかは事前に確認しておきましょう。

赤字決算と資金繰り

会社を運営していく上で最も大切なのは資金繰りです。

資金繰りが上手く回らなければ赤字であっても黒字であっても会社は倒産します。

ここで問題となるのが、赤字であれば「融資が受けにくくなる」という点です。

つまり、資金繰りへの対応が困難になる可能性についてです。

結論から言いますと、赤字決算の場合は銀行からの融資が許可されない可能性があります。

赤字になると多くの場合は銀行による信用格付けが「正常先」から「要注意先」として認定され、融資が断られる可能性が出てきます。

因みに、金融庁が発表している金融検査マニュアルには

  • 一過性の赤字(翌期には黒字が見込まれる場合)
  • 創業赤字(計画範囲内の主に創業5年以内の赤字)
  • 会社に売却資産などがあり返済能力に問題がない場合

は赤字であっても正常先と判断することが記載されています。

正常先であれば借入のハードルは大きく下がることになりますが、事業者は自分の信用格付けがどうなっているか知ることは基本的に出来ません。

信用格付けにおいて要注意先とならないように、まずは自分で赤字となった要因を分析することが重要です。その上で、翌期は黒字転換できるような事業計画書を作成しておくと良いでしょう。

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