「なぜM&Aがうまくいかなかったのか分からない」
このような疑問を抱えている人は少なくありません。
実は、日本におけるM&Aの成功率はたった2割~4割程度と言われています。
M&Aにおける「成功」の定義として「M&Aの目標達成率が80%超であること」とする判断基準があります。
日本経済新聞社の調査によれば、目標基準に達したと答えた企業は全体の36%と芳しくない数字となりました。
海外企業同士のM&Aであれば、成功率は50%まで上昇します。
日本におけるM&Aと14Pもの乖離があるのが分かります。
では、なぜM&Aにおける成功率がこんなにも低くなってしまうのでしょうか。
これからは、企業買収がうまくいかない理由について詳しく解説していきます。
【目次】
M&Aがうまくいかない理由
M&Aがうまくいかない理由について、ここからは「買収側」及び「売却側」に分けて、それぞれ4つずつ解説していきます。
買収側がうまくいかない理由
買収側のM&Aがうまくいかない理由については以下の4つが問題として挙げられます。
- 目的のずれ
- 不十分なデューデリジェン
- 戦略の欠如
- 社員や規定の統合
それぞれ詳しく解説していきます。
目的のずれ
目的がずれるケースは、例えば、「M&Aすること自体が目的となってしまった」場合などがあります。
特に自社にM&Aを専門に行っている担当がいるのであれば、その担当はM&Aを成功させることが最大の目的になっていることも少なくありません。
しかし、M&Aとはあくまで買収による販路拡大や事業発展のメリットを得るために行う手段の一つです。
つまり、仮にM&Aが成約になっても、その後のシナジー効果が生まれなければ、負債を引き継ぐだけにもなりかねません。
あくまでもM&A後にどのようなビジョンを持っているかが重要で、M&Aを成功させることが目的ではないという点に注意しておきましょう。
不十分なデューデリジェン
デューデリジェンスとは、企業買収する前に、その企業の「財務」「法務」「税務」「労務」などの他、「シナジー効果」「ブランド」「技術」「人材」など企業を徹底的に調べ上げることを言います。
デューデリジェンスが不十分であれば、M&Aが完了した後に、「簿外債務」や「法的なリスク(訴訟問題)」などが発見されるケースもあります。
また、リスク回避という側面の他にも、シナジー効果や人材や技術を手に入れることによる効果なども把握する役割がありますので、徹底したデューデリジェンスはM&Aを成功させるために欠かせない作業となります。
戦略の欠如
M&Aにおける戦略の欠如とは、買収側と売却側の状況をしっかり踏まえず、自社の成長のためにどの分野をM&Aによって強化したいのか、どのようなシナジー効果を期待するのかなども決められないまま、M&Aを行ってしまうことを言います。
自社の成長サイクルの中での達成目標があり、目標を達成する手段としてM&Aがあるという認識、戦略が無ければM&Aはうまくいきません。
社員や規定の統合
買収が完了してもM&A自体は完了したわけではありません。
M&Aが行われると、社員や規定がそれぞれ違う企業が今後一緒にやっていくことになるので、丁寧でスピーディーな企業文化の統合がM&Aを成功させる上で重要です。
企業内統合がうまくいかずM&Aが失敗したケースもあるため、企業統合にはしっかりと臨む必要があります。
売却側のM&Aがうまくいかない理由
売却側のM&Aがうまくいかない理由については以下の4つが問題として挙げられます。
- 不誠実な対応
- 株主や役員の同意が得られない
- M&A中の業績悪化
- 買収企業の要求をのみすぎた
それぞれ詳しく解説していきます。
不誠実な対応
交渉中に不誠実な対応を取ってしまうと、買収側もM&Aへのやる気がなくなり、うまくいかないことが多いです。
不誠実な対応の代表例としては、買収側の質問に対して自社を良く見せようと虚偽の答弁をすることが挙げられます。
虚偽答弁をしたとしても、デューデリジェンスや専門家による調査によって、結果的に必ずバレます。
後でバレると相手の信頼を無くすことになりかねません。
良いことも悪いことも全部誠実に対応することが大切です。
最悪の場合は後一歩というところでM&Aが頓挫する可能性もあるため、誠心誠意取組むようにしましょう。
株主や役員の同意が得られない
M&Aは秘密で行われるため、役員や株主に情報を公開するタイミングには気を付けなければなりません。
開示のタイミングによっては同意が得られない可能性もあります。
事前に反対しそうな株主や役員が分かっている場合は、アドバイザーとしっかり打ち合わせして対策をしておくようにしましょう。
反対しそうな株主がいれば、事前に株式を買い取っておくことも可能です。
税理士などの専門家に必ず相談して対応を検討して下さい。
M&A中の業績悪化
M&A交渉は少なくとも数か月、長くて1年を超える場合もあります。
その間に会社の業績が悪くなることも十分考えられ、最悪の場合M&Aが中止になるリスクがあります。
M&Aを開始した時点で、業績の悪化によりM&Aが頓挫する可能性があることを念頭に置きながら、スピーディーな対応を取ることが求められます。
買収企業の要求をのみすぎた
M&Aはあくまで対等取引です。しかし、売却側が買収側に言われるがまま要求をのんでしまうケースがあります。
しかし、買収側に譲歩し続けた場合、自社の適正価格での売却がしにくくなります。
不誠実になることは避けなければいけませんが、買収側の要求に対して「この条件は飲めません」としっかり伝えることもM&Aを行う上で大切です。
こちらの要求が通らない状態で、M&Aを進めていく必要はないという強い気持ちを持つことも必要です。