「暦年課税制度を利用して年間110万円ずつ贈与していたけど、制度が無くなるって本当?」
「基礎控除が無くなったら、贈与税と相続税はどう変わる?」
このような不安や疑問を抱えている人は少なくありません。
実は令和3年度の税制改正大綱によれば、贈与税の基礎控除が無くなる可能性を含めた税制改正が行われる可能性が示されています。
万が一基礎控除が無くなるような大幅な税制改正で行われる場合、今まで基本として行われていた生前贈与などの相続対策が意味を成さない時代が来るかもしれません。
この税制改正は早ければ令和4年の4月1日から施行される予定であり、今しっかり知識を付けて対策することが求められています。
今回は、贈与税の基礎控除について、税制改正の内容を踏まえ全部解説していきます。
贈与税の基礎控除が廃止される?
皆さんご存じの通り、贈与税には年間110万円までの基礎控除があります。
基礎控除の範囲内で毎年徐々に相続財産を減らしていくことが、相続対策の基本として用いられてきました。
実は、近年になって、その基礎控除が税制の改定によって廃止される可能性がでてきました。
また、生前贈与した財産であっても相続前3年間に贈与した財産に関しては、相続財産として課税されますが、この期間ももっと長期間となる可能性があります。
このような、大幅な税制の改正が行われる可能性があります。
基本的には今まで利用できていた税制優遇が利用できなくなると予想されるため、納税者にとっては不利な改正になりかねません。
そこでまずは、今回改正される可能性がある、「理由」や、その対策について詳しく解説していきましょう。
贈与税の基礎控除が無くなる理由
贈与税の基礎控除廃止を含めた検討をするに至った経緯としては以下の2点が挙げられます。
- 相続と贈与では「財産を受け取る」という点で同じなのに、相続税と贈与税では「税負担」が異なるという点。
- これを中立にする動きがあった点
つまり、贈与税と相続税を一体課税とすることが検討された経緯でしょう。
その他にも、諸外国の動きも改正の動きを加速させた要因と言えます。
実は、国が税制を決める際には、諸外国の税制を参考にしています。
諸外国の中では、まず「生前贈与加算」の期間が、そもそも3年ではなく、10年(ドイツ)や15年(フランス)となっており、日本と比較しても長期間の設定となっています。
アメリカに関しては生前贈与加算の制度そのものがなく、暦年贈与の非課税枠もありません。
そもそもが、生前贈与分を相続時に加算する制度となっているのです。
この税制では、贈与をするタイミングによって税負担が変化することが無くなり、税制逃れが出来ないように工夫がされています。
このような諸外国の税制度や動きから、日本も税制の改正が検討されたと考えられます。
日本における税制改正案
もし日本が諸外国(特にアメリカ)のような改正がなされるのであれば、主に以下の2点のような改正がされる可能性が高いです。
- 暦年課税制度の廃止
⇒すなわち年間110万円の基礎控除が無くなり、全ての贈与財産は相続時に課税される。
- 生前贈与加算の引き延ばし
⇒現在3年で設定されている生前贈与加算が、5年~15年と大幅に期間が延びる可能性がある。
尚、この改正が行われる時期についてはまだ確定しておりませんが、令和4年度の税制改正で出てくる可能性もあるため、早ければ令和4年4月1日以降の贈与について改正される可能性があります。
基礎控除廃止の対応策
税制改正の際に、遡って課税されることは考えにくいため、先んじて贈与を行っておくことも対応策の一つです。
これは、自分だけではなく、自分の親の相続にも関係してくる話ですので、出来る範囲で生前贈与を行っておくことも重要です。
もし生前贈与をどの程度すればいいのかご自身で判断がつかない場合は、お近くの税理士に相談してみることをおすすめします。
まとめ
- 令和3年度の税制改正大綱で贈与税の基礎控除廃止を含めた改正が検討されている
- 生前贈与加算が3年から15年程度まで引き延ばされる可能性がある
- 遡って課税される可能性が少ないため今のうちに生前贈与をしておくことが望ましい
基礎控除が廃止された場合、暦年贈与による生前贈与は意味がないものになってしまいます。
生前贈与加算については、どの程度見直しがかかるか分かりませんが、長期間になればなる程、早めで計画的な生前贈与が求められます。
贈与や相続に関しては、計算が難しいケースが多いことから、顧問税理士やお近くの税理士事務所を訪ねてみることをおすすめします。
一度専門家に話を聞くことで、最も適した方法で贈与することができます。
相続対策はどれだけ早めに考えられるかによって成果が大きく変わってきます。
税理士報酬や資金面に不安がある人は、市町村役場などで定期的に開催されている税理士の無料相談会などを利用して、一度相談してみてはいかがでしょうか。