「障害者に対する贈与は非課税になるって本当?」
「特定贈与信託の条件や流れはどうなっている?」
このような不安や疑問を抱えている人は少なくありません。
結論から言うと、障害者で一定の条件を満たしている場合は、最大6,000万円まで贈与税が非課税になります。
非課税枠を利用するためにも条件や流れについてしっかり理解しておくことが重要です。
そこで今回は、特定贈与信託で贈与税を非課税にする方法を紹介します。
【目次】
贈与税と障害者控除
特定の障害者の場合、贈与税が非課税になる場合があります。
「特定の障害者」とは、以下に該当する場合を指します。
- 重度の心身障害者
- 中程度の知的障害者
- 障害等級2級または3級の精神障害者
紹介した3つの内、いずれかに該当する場合、手続きを行えば贈与税を一定額まで控除することが出来ます。
障害者控除で贈与税を非課税にする方法
贈与税を非課税にする方法に関しては、「信託(※)銀行に一定条件の下信託する場合」に限られており、さほど紹介した一定の条件を満たす場合に3,000万円(特別障害者は6,000万円まで)非課税となります。
(※)信託とは、自分の財産の使用用途を定め、第三者に信託すること
尚、贈与税の非課税の適用を受けるためには、「障害者非課税信託申告書」を所管の税務署に提出する必要があります。
障害者非課税信託申告書は、財産を信託する際に信託会社を通じて、税務署に提出することになるため、直接税務署に提出する必要はありません。
方法に関しては信託する信託銀行等に相談すると良いですが、事前にお近くの税理士に相談してみるのも手段の一つです。
特定贈与信託の概要
特定贈与信託は、障害を持っている人の生活の安定を図ることを目的に「親族」などが信託銀行等に金銭等の財産を預け、信託銀行等がその財産を管理するものです。
信託銀行等が管理するのは、特定障碍者の「生活費」「医療費」など定期的に金銭の支払いが必要なものとなります。
障害を持った人の両親等、贈与した人が万が一亡くなったとしても、信託銀行等が財産を管理することとなるので、安心して贈与することが可能です。
相続後に一気に財産を渡してしまうことに不安感がある人や、自分が亡くなった後障害を持った子供の生活が不安だという人に特にメリットのある制度となっています。
特定贈与信託の注意点
特定贈与信託にはいくつか注意点があるので確認しておきましょう。
- 特定贈与信託の終了日
特定贈与信託は、受益者である特定障害者が死亡した日に終了することとされており、これ以外に信託期間を定めることが出来ません。
- 信託財産
特定贈与信託は、定期的に金銭を交付する必要があることから、信託できる財産は、法令により①金銭、②有価証券、③不動産などの収益を生じる財産や換金性の高い財産に限られます。
- 信託運用収益
信託運用によって生じる収益は、受益者である特定障害者の所得となることから、所得税が課税される場合がります。
特定贈与信託の流れ
特定贈与信託は以下の流れで手続きが行われます。
- 委託者が受託者に金銭等を信託する
- 受益者が障害者非課税信託申告書を提出
- 受益者は定期的に金銭の交付を受ける
- 受益者が亡くなったら受益者の相続人または受遺者に交付される
まずは、委託者(親族)が受託者(信託銀行)と信託契約を行います。この時自分の子供当、特定障害者を、贈与を受ける者(受益者)として指定します。
贈与を受ける受益者は、障害者非課税信託申請書を、信託銀行を通じて税務署に提出します。
受益者は信託契約に定められた方法で、生活費や医療費などを信託銀行から定期的に受け取ります。
以上の流れで、特定贈与信託を受けることとなります。
その他障害者が受けられる控除や非課税枠
贈与税の非課税枠以外にも、障害者が受けられる所得控除(※)はいくつかあります。
(※)所得控除とは、課税の対象となる所得を計算する時に一定額を差し引くという税制上の制度のこと。
「障害者所得控除」とは、給与所得控除を控除した後の収入から更に控除される減免制度であり、直接住民税や所得税が減免されます。
尚、障害者所得控除は就労中であれば年末調整で申請することが出来ますが、万が一途中で退職したり、現在フリーで仕事をしたりしている人などは、自身で確定申告しなければ障害者控除を受けられないため注意が必要です。
まとめ
- 重度の心身障害等一定の条件を満たすことで非課税枠を利用できる
- 特定贈与信託は信託銀行等に金銭を信託し、障害者非課税信託申告書を信託銀行に提出することで利用できる
- 障害者は贈与税の他にも所得税の控除を受けることが出来る
障害を持っている人に贈与する場合は、非課税枠を利用できる可能性があります。
金銭を信託して贈与を行うことで、自分の死後残される障害を持つ子供への金銭的な不安の解決にも繋がります。
特定贈与信託について、贈与税の計算など詳しく知りたい人は、お近くの税理士に一度相談してみると良いでしょう。