「個人事業主だけどそろそろ事業をたたみたい」
このようなことを考えている人は少なくありません。
個人事業主が廃業・清算する場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
経営が上手くいかず廃業を検討している人は、まずどのような内容で廃業手続きが進んでいくのかを把握し、その上で決定することが大切です。
今回は個人事業主の廃業・清算について解説していきます。
【目次】
個人事業主が廃業・清算する場合の手続き
個人事業主が廃業・清算する場合にはいくつか手続きを経る必要があります。
- 税務署に書類を提出
- 都道府県税事務所へ書類を提出
- 廃業手続き費用の清算
それぞれについて詳しく説明していきましょう。
税務署に書類を提出
廃業・清算に際して、所管の税務署に以下の書類を提出するようにしましょう。
- 個人事業の開業・廃業等届出書
- 所得税の青色申告取りやめ届出書
- 事業廃止届出書
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書
- 所得税及び復興所得税の予定納税額の減額申請書
それぞれについて詳しく解説していきます。
<個人事業の開業・廃業等届出書>
個人事業主が廃業する時には、「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する必要があります。
本届出書の提出期限は廃業した日から数えて1ヵ月以内となっているので、遅れずに提出するようにしましょう。
<所得税の青色申告の取りやめ届出書>
“青色申告”を行っている個人事業主は、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出する必要があります。
青色申告を取り止めしようとする年、つまり廃業をした年の翌年3月15日までに提出しなければなりません。
尚、本書式の記入欄の中には「青色申告書を取り止めしようとする理由」という項目がありますが、「廃業のため」と記載するようにして下さい。
<事業廃止届出書>
本書式は事業を行っていた時に消費税を支払っていた場合、廃業事由が発生してから速やかに提出する義務があります。
<給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書>
「従業員」「専従者」に給与を支払っていた個人事業主は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を廃業した人から数えて1ヵ月以内に提出しなければなりません。
<所得税及び復興所得税の予定納税額の減額申請書>
所得税を予定納税している個人事業主が廃業した場合、所得税が予定より少なくなる可能性が高いので、予定納税額を減額出来ます。
その場合には「所得税及び復興所得税の予定納税額の減額申請書」と申告納税見積額の計算と基礎となる事実を記載した書類を添付し、以下の期間中に提出する必要があります。
- 第一期分及び第二期分の減額:その年の7月1日~7月15日
- 第二期分のみ:その年の11月1日~11月15日
都道府県税事務所へ書類を提出
個人事業主は先ほど紹介した管轄税務署に提出する書類の他にも、都道府県税事務所に送る書類があります。
ただし、都道府県税事務所への提出書類や提出期限は、各都道府県の対応により違うため、まずはご自身が事業を行っている都道府県の税事務所へ問い合わせしてみて下さい。
尚、東京都の場合は、事業開始(廃止)当申告書を廃業の日から10日以内に提出しなければなりません。
大阪府の場合10日以内という縛りが無く、遅滞なく提出する必要があります。このように都道府県において手続きが異なります。
廃業手続き費用の清算
廃業手続きに必要な費用は、登記等の必要がないため基本的にかかりませんが、廃業するまでに清算しなければいけないものはいくつかあります。
- 設備の処分清算
- 従業員尾退職金
- 在庫処分
- 賃貸物件の現状回復
- 負債の引継ぎ
それぞれ解説していきましょう。
<設備の処分清算>
事業で利用していた設備や有形固定資産を処分する必要があります。
使わないものは売却してお金にするのが良いですが、上手く売却が出来ないケースもあります。
<従業員退職金>
廃業となれば、事業そのものが無くなりますので、今まで雇用してきた従業員は全員解雇することになります。
個人事業主が従業員のために退職金制度を定めるかどうかは自由ですが、もし制度を定めている時には退職金の支払義務が発生しますので、退職金を用意しなければなりません。
<在庫処分>
商品在庫が残っている場合は、廃業時に全て処分しなければなりません。
廃棄処分にもお金がかかるので、計画的に在庫をコントロールして損失を押さえることが重要になります。
<賃貸物件の現状回復>
店舗や事務所を賃貸していた場合は、借りた当時の現状に回復する必要があります。
事業規模や業種、場所等により費用は大きく変わるので注意が必要です。
<負債の引継ぎ>
法人と違い個人事業主の場合は、借りているのはあくまで個人ですので、事業を廃業しても負債はそのまま引き継ぐことになります。
多額の借金が残る場合は、債務整理を含めた様々な手段を検討しなければいけません。
まとめ
- 個人事業主が清算するためには所管の税務署及び都道府県税事務所に届出が必要
- 都道府県税事務所での手続きは都道府県ごとに内容が異なる。
- 個人事業主の場合、廃業後も負債はそのまま残る
個人事業主の場合でも事業を辞める場合は様々な手続きが必要です。
また、廃業後負債が残るかどうかは廃業を検討する上で重要になります。
清算活動では費用が嵩みますので、専門家である税理士に依頼して正確な費用を算出するなど対策を講じる必要があります。