「コロナの影響で赤字決算になってしまった」
「赤字になった時の税制優遇があるって本当?」
このような不安や疑問を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、赤字になった場合には様々な税制優遇を受けられます。
コロナの影響を受けている企業も多く赤字決算となった企業もいるでしょう。
しかし、赤字でも企業が倒産するわけではありません。
資金繰りに気を付けながら税制優遇を活用してみましょう。
【目次】
コロナで赤字決算になった時は
昨今の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、多くの企業が売上減少、資金繰り悪化が問題となっております。
事業継続を断念した企業も徐々に増え続けているのが現状です。
新型コロナウイルス感染症が拡大してから1年を経過したことから、コロナの影響を受けている期間の決算を多くの企業で終えたことでしょう。
その中で赤字決算した企業も多いのではないでしょうか。
ご存じだと思いますが、企業は「赤字」であっても倒産しません。
企業が倒産するのは「現金」が無くなった時、つまり資金繰りが出来なくなった時に倒産します。
赤字で決算してしまったことは仕方ないとして、企業としては倒産をしないようにどうやって資金繰りを行っていくかを考えることが大切です。
税務面からみても、赤字の企業には優遇措置があることから、赤字決算してしまった企業は、ぜひ税制優遇を活用しながら今期で建て直しを図ってみて下さい。
赤字決算の税制優遇「青色欠損金の繰越控除」
赤字決算した時には「青色欠損金の繰越控除」を利用することが出来ます。
その期に生じた収入からその期に生じた費用を差し引いて算出された数字を利益と言います。
利益がプラスの場合は黒字、マイナスの場合は赤字です。この赤字となった利益を「欠損金」と言います。
青色申告を行う承認を税務署からもらっている企業は、赤字分を翌期以降10年間に亘って繰り越すことが認められており、翌期に出た利益から欠損金を相殺することが可能です。
所得税は利益の額が増えることに比例して支払額も増えることから「青色欠損金の繰越控除」とは今期の赤字を来期の黒字から差し引くことによって税金支払いを削減できる税制優遇という事になります。
青色欠損金の繰越控除の計算方法
では実際に青色欠損金の繰越控除の計算を具体的に行ってみましょう。
- 3月決算の法人
2021年3月 当期利益 ▲500万円 →法人税支払い0円(500万円分次期繰越)
2022年3月 当期利益 100万円 →法人税支払い0円(400万円分次期繰越)
2023年3月 当期利益 300万円 →法人税支払い0円(100万円分次期繰越)
2024年3月 当期利益 200万円 →100万円に対する法人税が課せられる(当期利益200万円-繰越欠損金100万円=100万円)
以上のように、2021年3月の赤字分を向こう10年に亘って黒字から相殺できるので法人税の支払いを軽減できます。
2024年には繰越欠損分が無くなるため、当期利益200万円-繰越欠損金100万円=100万円に対して、法人税が課せられることになります。
青色欠損金の繰戻還付
実は青色欠損金は繰戻還付を受けることも可能です。
繰戻還付とは、前期に黒字で納めていた法人税の内一定の金額の還付を受けられる制度です。
還付を受け付けるためには確定申告の他に還付請求書を提出する必要があるので注意して下さい。
尚、還付を受けられるのは法人税及び地方法人税のみで、法人事業税や法人住民税に関しては繰越控除を受けることになります。
取扱いが税金によって変わりますので、不安のある方は顧問税理士やお近くの税理士事務所に問い合わせしてみるのが良いかもしれません。
繰越欠損と繰戻還付のどっちを受けるべきか
結論から言いますと、税金を相殺できるという観点でどちらも同じです。
もし手元に資金が無く、少しでも現金が欲しい場合は繰戻還付を受ける方が良いかもしれませんし、今期は大幅に黒字が出そうな場合は繰越欠損した方が良いかもしれません。
注意したいのは中小企業の場合、利益800万円までにかかる税金は15%ですが、それを超える場合は23.2%の税率に変わるため、税金の支払額が大幅に増加するという点です。
もし今期の決算で利益が800万円を超えることが見込まれる場合は、繰越欠損を利用した方が税金支払い面では有利な可能性もあります。
まとめ
- 赤字決算したら青色欠損の繰越控除が利用できる
- 赤字決算したら繰戻還付が利用できる
- 繰越控除と繰戻還付は税金と相殺できる面では同じだが、所得税率によって欠損控除が有利になるかのせいがある
赤字決算した場合はぜひ税制優遇を利用して、次期建て直しを図って下さい。
また、単年度の赤字であれば金融機関も貸付に対して前向きに検討してくれる可能性が高いので、資金繰りが厳しくなる前に相談しておくことが大切です。
現金が無くなる前に資金繰りの目途を立てておくことが大切です。
特にコロナのような終わりが見えにくいものに関しては、長期での資金繰りを検討しておく必要があります。