「賃貸物件を相続したけれど相続税が安くなるって本当?」
このような疑問や不安を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと賃貸物件を相続した場合、相続税評価額が下がります。つまり、相続税の対策として有効な手段となります。
しかし、なぜ賃貸物件の相続税が安くなるのか、そしてどの程度相続税が安くなるのかを知っている人はあまり多くないでしょう。
賃貸物件を用いた相続税対策は比較的よく行われる方法ですので、知識として持っていても損はありません。
そこで今回は、賃貸物件の相続税をテーマに紹介していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
賃貸物件は相続税が安くなる
実は、賃貸物件を相続すると現金で相続したり、自家用不動産を相続したりするよりも相続税を安く済ませることが出来ます。
ではなぜ賃貸物件だと相続税が安くなるのでしょうか。
それは、賃貸している土地や建物であれば、所有者がその物件を売却しようとしても簡単に売却することが出来ないためです。
借地借家法では、借入人の権利を守るために貸している持ち主が自由に物件を売却できないように定めています。
評価額とは、その物件が現金化した時にどの程度の価値を保有しているかという点が指標になります。
自分の意思で売却できない物件は、その土地や建物の評価額を下げる要因となりますので、賃貸物件の相続税は安くなると言われているのです。
尚、相続税法においてどの程度評価額を減らすかどうかという問題は、借地権割合や借家権割合を使用することで、不動産評価額を増減させることとしています。
借地権割合と借家権割合
相続税路線価図を参照すると、相続税路線価額の隣にA~Gのアルファベットが付いているのが分かります。
借地権割合は土地ごとに90%~30%の割合が決められています。
【借地権割合】
記号 | 借地権割合 | 記号 | 借地権割合 |
---|---|---|---|
A | 90% | E | 50% |
B | 80% | F | 40% |
C | 70% | G | 30% |
D | 60% |
また、マンションやアパートなどが立っている土地に関しては「貸家建付地」と言い、借家権割合は全国一律で30%となります。
【借家権割合】
借家権割合は全国一律30%
また、土地の評価額は「どの程度建物を貸しているか」も重要な指標となります。これを賃貸割合と呼びます。
原則として課している部屋の床面積の割合で賃貸割合を算定することになります。
例えば、保有しているアパートの部屋数が4部屋だったとして、それぞれの床面積が同様であった場合、その内2室を貸出していれば賃貸割合は50%となります。
単純に、総戸数と空室数の割合ではないため注意が必要です。
【賃貸割合】
課税時期に賃貸されている専有部分の床面積÷家屋の専有部分の床面積の合計
尚、一時的な空室は賃貸中とみなすことが出来ます。一時的な空室とみなされる目安は凡そ相続開始前後1ヵ月程度とされています。
評価額の計算方法
今まで「借地権割合」「借家権割合」「賃貸割合」を紹介しましたが、実際にそれらを用いて賃貸物件の評価額を計算してみましょう。
計算方法は以下の算式を用いて行います。
【評価額の計算】
貸家建付地の評価額=本来の相続税評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
例えば、本来の相続税評価額が2億円だった場合で、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合50%の場合は以下のようになります。
2億円×(1-0.6×0.3×0.5)=1億8,200万円
以上のケースであれば、相続税評価額は1,800万円も減額されることが分かります。
賃貸物件で相続対策するメリットとデメリット
ここからは、賃貸物件で相続対策をするメリットとデメリットにはどのようなものがあるのか紹介していきます。
賃貸物件で相続対策するメリット
賃貸物件で相続対策すると相続税が安くなるという事は先ほど紹介しましたが、それ以外にも、相続した後に賃料収入が発生することによって、相続人の生活が安定するというメリットもあります。
尚、賃貸物件の場合は、減価償却費というキャッシュが流出しない帳簿上の経費も使えることから、所得が増えすぎて税金支払いに苦しむという事もありません。
賃貸物件で相続対策するデメリット
賃貸物件で相続対策するデメリットとしては、賃貸物件が空き家になる可能性が拭えないことです。
空き家が多くなると賃貸割合が下がり、評価額の減額はさほど望めないため、賃貸物件としてのメリットを最大限受けることが出来ません。
また、賃貸物件に融資があり、負債も一緒に相続するとその返済に苦労する可能性もあります。もちろん、空き家が多ければ収入も望めません。
その上、空き家が多いと不人気の物件として売却も難しくなります。
オーナーチェンジ物件として高値で売るためには満室の方が有利であるため、空室の賃貸物件を相続した場合は、売却も運用も困難となる状況にもなりかねません。
物件を相続する時には、相続税額の減額のみならず、将来発生する経費や税金、返済額についてもしっかり把握して判断する必要があります。