民法での債務の分類
債務の分類に持参債務と取立債務があります。
持参債務は、債務者が債権者の所に金銭等を持参して弁済する必要がある債務です。
取立債務は、債権者が債務者の所まで金銭等の受取りに行くことで給付を受ける債務です。
昭和時代的イメージでは、持参債務とは、アバートの賃借人が大家さんのところに家賃を持っていく、借金をした人が貸主のところに返済に行く、というようなものです。
取立債務とは、日刊新聞の配達所が購読者のところに新聞代を受取りに行く、事業の売掛金の回収の為に売掛先の会社に毎月末に小切手や手形を受取りに行く、というようなものです。
会社で支払われる給料は取立債務であるとの判決もあります。
相手先に出向いていく交通費等の負担については、自然に、持参債務は持参者、取立債務は取立者が負うことになります。
持参債務か取立債務かは、契約で定めるものですが、契約を文書にしていない場合、慣行に従って行われることを前提に合意していることが多いと思われます。
集金に行くことがなくなった
時代が変わり、持参とか取立とかの実務的行為は消滅し、金銭債務の支払いは銀行振込に代わりました。
銀行振込に代わるに際し、取立費用は相手側持ちなのだから、振込みに際しての振込料は債権者側の負担だということで、振込料の差引きが新しい慣行となりました。
インボイスが新たな火種に
この過去の取立債務の実務の名残りとしての振込料相手持ちの商慣習について、インボイス制度導入で、実務上混乱しているところがあります。
振込手数料も課税取引なので、インボイスが必要な取引に該当します。
しかし、受取側には振込料のインボイスはありません。
それで、振込料負担の実態への疑問とか、振込料値引処理の書類要求とか、から来る実務上のヤリトリが起きたりしています。
こういう混乱や、事務処理負担への配慮として、差引振込料など税込価額が1万円未満である場合、少額特例として帳簿のみの保存により仕入税額控除ができることとされています。
2023年税制改正では、それまであった事業者規模や期間限定の要件も外したインボイス交付免除規定として規定し直されています。