コロナ禍で会社員の副業が身近なものとなっています。
国は成長戦略の中で既に新しい働き方として兼業・副業推進の環境整備に取り組んでいます。
しかしながら、副業に対する所得税の扱いは旧来のままです。
給与所得と事業所得の違い
副業に対する所得税の扱いで最初に問題になったのは、給与所得に該当するのか事業所得に該当するのかという論点でした。
最高裁昭和56年判決は、給与所得とは、会社との雇用契約のもと、使用者の指揮命令を受ける従属関係において提供される労務の対価であり、事業所得は、「自己の計算と危険」のもと、独立して営まれ、営利性、有償性、反復継続して遂行する意思と社会的地位が客観的に認められる業務から生ずる所得であると判示しました。
副業は事業所得か?雑所得か?
副業が雇用関係になく従属関係もない場合、給与所得でないことは明らかです。
とすれば副業は事業所得になると理解してよいでしょうか?
この点、課税庁は、副業を「一般的に雑所得である」としており、給与収入に対する副業収入の規模や、設備の状況、営業日数(会社勤務の時間以外にどれくらい割り当てるか)などを勘案して雑所得と判定しているようです。
平成30年頃までは、上記の要素を勘案して副業の損失金額を事業所得の損失と認めず、他の所得との損益通算を認めなかった判例が多くあります。
副業が事業所得となる日は来るか?
これからは、会社員は勤務のかたわら、副業を普通に行えるようになり、自己の能力を高め、人脈を広げ、経験を積み重ねていくことでしょう。
自身の労働時間を管理し、秘密保持と競業避止義務を守り、「自己の計算と危険」のもと働くことになります。
しかし、雑所得には、青色申告制度が適用されず、他の所得と損益通算も青色申告特別控除などの特典もありません。
青色申告制度の趣旨は、自主的な納税申告のため、適正な帳簿の作成を勧奨するものです。
副業を営む会社員は、適正な帳簿を作成することで管理意識が高まり、自律した仕事の仕方に転化していくことでしょう。
経営者にとっても社員のスキルが高まり、社外から新たに優秀な人材を確保する機会になるのではないでしょうか。
副業が普通に事業所得と同様に位置付けられることはないのか。さて税の対応は?