「繰越損失って何?」
「赤字を翌期に繰り越せるってどういう意味?」
このような疑問や不安を抱えている人は多いです。
結論から言いますと、繰越損失とは赤字を翌期に繰り越す制度の項とであり、繰り越された赤字は翌期の黒字と相殺して節税することが可能です。
今回は、繰越損失の内容と、適用条件について解説します。
【目次】
繰越損失とは
繰越損失という言葉を聞いたことがあっても、内容についてはよく分からないという人も多いのではないでしょうか。
結論から言いますと、繰越損失とは「一年間で生じた総収入額から必要経費を引いた際に生じた損失金額を、翌年3年間に渡り繰り返す事が出来る制度」のことを言います。
つまり、赤字が出た際に、その赤字を来期で出た利益と相殺して、税金の節税が認められる制度となっています。
以下の例を参考にしてみて下さい。
今回の確定申告で100万円の損失が出た
翌年に400万円の利益が出た
この場合、翌年の確定申告の際に400万円-100万円=300万円分を利益としてみることが出来るため、100万円分の税金が節税になります。
繰越損失を適用するための条件
繰越損失は適用するためにいくつか条件があります。
- 赤字であること
- 青色申告であること
損失の繰越なので、赤字であることが条件になるのはもちろんですが、確定申告の種類が青色申告である必要もあります。
青色申告について詳しく説明していきましょう。
青色申告とは
確定申告には「青色」と「白色」と呼ばれる申告の方法があります。
青色申告をするには
- 「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかの所得がある
- 税務署にあらかじめ承認をもらう
- 複式簿記で毎日帳簿を付ける
以上の条件を満たす必要があります。
以上の条件を満たさない場合は全て白色申告となります。
白色申告の場合は、複式簿記の必要もありませんし、帳簿も簡易的なものでも認められていますが、繰越損失を初めとした節税のメリットを受けられませんので、事業を拡大していきたい人は青色で申告出来た方が良いでしょう。
繰越損失の注意点
繰越損失にはいくつか注意点があります。
- 青色申告特別控除分は繰越できない
- 翌期損失を相殺出来た場合は翌々期には繰越出来ない
それぞれについて詳しく説明していきましょう。
青色申告特別控除分は繰越出来ない
青色申告には65万円もしくは10万円の青色申告特別控除を受けられます。
しかし、この控除分はあくまで「控除」であって、赤字分として算入することは出来ません。
例えば、赤字の金額が100万円だったとしましょう。
そこから青色申告特別控除分の65万円を更に差し引き、赤字を165万円として翌期に繰り越すことは出来ないという意味です。
翌期損失を相殺出来た場合は翌々期に繰越出来ない
繰越損失とは、赤字分を翌期に繰越て利益と相殺する制度です。
そのため、今期の赤字分を翌期に全額相殺で来た場合は、翌々期にその今期の赤字分を相殺することは出来ないという事です。
以下の例を参考にして下さい。
【繰越損失が翌々期まで続くケース】
令和2年12月期、損失(赤字)300万円※青色申告により繰越損失適用
令和3年12月期、利益(黒字)200万円
※利益200万円-繰越損失300万円=▲100万円※青色申告により繰越損失適用
令和4年12月期、利益(黒字)150万円
※利益150万円-繰越損失100万円=50万円(利益) ※翌期への繰越損失なし
となります。
【繰越損失が翌期で相殺されるケース】
令和2年12月期、損失(赤字)300万円※青色申告により繰越損失適用
令和3年12月期、利益(黒字)500万円
※利益500万円-繰越損失300万円=200万円 ※翌期への繰返損失なし
損失分が相殺された時点で繰越が出来なくなる点に注意して下さい。
繰越損失の対象
繰越損失の対象について以下に表をまとめましたので、参考にして下さい。
【繰越損失の対象】
対象損失 | 繰越損失の可否 | ||
---|---|---|---|
損失の呼称 | 損失の説明 | 青色 | 白色 |
純損失 |
以上の所得損失 |
〇 | × |
雑損失 |
|
〇 | 〇 |
株式等譲渡損失 |
|
〇 | × |
先物・FXの損失 |
|
〇 | × |
変動所得の損失 |
|
〇 | 〇 |
被災者事業用資産損失 |
|
〇 | 〇 |
まとめ
- 繰越損失とは、赤字を翌期の黒字と相殺できる制度
- 損失は3年間繰り越せる
- 繰越損失するには青色申告する必要がある
赤字が出た場合は、翌期の節税のためにも繰越損失することをおすすめします。
しかし、繰越損失するためにはあらかじめ税務署に青色申告の承認を得る必要があります。
今期赤字が出るかは事前には分からないため、後で後悔しないように今白色申告の人は青色申告へ変更してみる事も検討してみてはいかがでしょうか。
申告や会計、税金処理で不安がある人は一度税理士などの専門家に相談することも手段の一つです。
無料相談等もありますので、是非利用してみて下さい。