「株価の評価方法が分からない」
「M&Aを行うために株価評価による企業価値を知りたい!」
このような疑問を抱えている人は少なくありません。
結論からいますと、M&Aにおける株価の評価方法は、いくつか存在します。
会社の状況、株主の状況などによって採用される評価方法が大きく変わるため、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
【目次】
取引事例比準方式
評価対象株式の市場での実際取引価額を基に株価の算定を行います。
具体的には以下の2つの方法が用いられます。
- 市場価額法
- 取引事例価額法
市場価額法
市場価額法とは、上場している会社のみが使用できる株価の評価方法です。
株式市場における実際の株価を参考に評価算出します。
評価時点の価格は前日終値で算出する方法の他
- 1ヵ月の終値の平均値
- 3か月の終値の平均値
- 6ヵ月の終値の平均値
など、平均値を用いて算出することが多いです。
取引事例価額法
取引事例価額法は
- 対象企業と条件が近い取引事例を収集した中から、適切な事例を選択
- 取引価額の事例から必要に応じて対象企業の修正
- その他の個別的要因の比較を行って求められた価額を比較考慮
- 対象企業の価額を算出
以上の流れで株価評価を行う方法です。
市場で実際に行われている価額から、株価を算定する方法ですので、納得性が高く、M&Aにおいても良く利用される方法です。
類似会社比準方式
公開株価を基に、評価対象会社の業績、財務実態を、類似会社等のものに比準して株価を算定する方法です。
まずは対象企業の業種から絞り、出来るだけ多くの比較企業を収集した後、対象企業と似たような事業内容、事業規模を選択し、その株価に則って計算します。
類似会社比準方式の他に「類似業種比準方式」や「PER比準方式」などと違う言葉で表現されることがありますが、基本的に大きな違いはありません。
類似する比較対象を「企業」で見るか「業種」でみるか「PER」で見るかの違いです。
それぞれ同じ意味で使われることも多いので覚えておきましょう。
純資産価額方式
純資産価額方式とは、純資産総額を基に株価を算定する方法です。
具体的には以下の3つの方法が用いられます
- 簿価純資産法
- 時価純資産法
- 時価純資産法+営業権法
簿価純資産法
会計上の純資産額を参考に1株当たり純資産の額を計算する⽅法になります。
純資産額を基礎とした計算であるため、客観的で納得性の高い評価方法ですが、各資産の時価は簿価と乖離していることも多く、簿価純資産法をそのまま企業価値の評価に使⽤することはほとんどありません。
時価純資産法
時価純資産方式とはコストアプローチによる株価評価方法の一つです。
- 貸借対照表に資産の時価評価
- 簿外負債の計必要な調整
- 修正後の正味純資産により企業価値を算出
- 評価発行済み株式数で割って1株あたりの株価を算定
以上の方法で評価することができます。簿価純資産報と比較しても正確な株価評価が可能です。
時価純資産法+営業権法
時価純資産に営業権を加算して算出する方法です。
評価対象企業の収益力を考慮した企業価値の算出が可能な方法のため、中小企業のM&Aにおいて多く採用されています。
収益還元方式
収益還元とは、企業種益をもとに株価を算定する方法です。
具体的には以下の3つの方法が用いられます。
- 収益還元法
- DCF法
- リアルオプション法
収益還元法
対象企業が将来的に生み出す予想利益を基準に、対象企業の価値を求める評価方法です。
DCF法
DCF法とは、DCFは、ディスカウンテッド・キャッシュ・フローの略です。
- 会社が将来生み出す価値をフリーキャッシュフローで予想
- 資本コスト(WACC)で割り引いて現在価値(DCF)に換算し会社評価
以上の方法で評価します。
DCF法は「割引キャッシュフロー」「割引現金収支法」と呼ばれることもあります。
リアルオプション法
将来に柔軟性を持つプロジェクトや資産は、そうではないプロジェクトや資産に比べて高く評価できるという考えの下、アプローチを正しく適用することにより正確な企業価値の評価ができる可能性が高いです。
リアルオプション法が、景気変動、競合企業の動向などの外部環境要因の変動に対するマネジメントに柔軟性をDCF法に織り込むことが出来る方法であるため、企業が持つプロジェクトやマネジメント能力なども加味して評価することができます。
短期的なキャッシュフローと長期的な成長戦略が同時に議論されることにより、より戦略的な意思決定が可能となり、正確な企業価値の算出に繋がります。
配当還元方式
配当還元方式とは、配当を基に株価を算定する方式のことです。
過去2年間の配当金額を10%の利率で還元して、元本である株式の価額を求める方法のことで、一種の収益還元方式といえます。
同族株主以外の株主に加え、同族株主のうち少数株式所有者が取得した株式については、会社規模にかかわらず、配当還元価額という特例的評価方法によって評価をします。