「経営資源集約化税制って何?」
「設備投資しても税額控除になるって本当?」
このような疑問を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、経営資源集約化税制とは、株式の取得価格の一部を損金計上できる制度のことです。
企業の積極的なM&Aを促すために税制面で優遇する措置であり、事業の転換や拡大を目指している企業にとって知って損はない制度となっています。
実は、経営資源集約化税制を知らないでいると、払う必要のない税金まで支払うことになります。
損をしないために確認しておくことが重要です。
そこで今回は、経営資源集約化税制について説明していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
経営資源集約化税制とは
経営資源集約化税制とは、株式の取得価額として計上する金額(取得価額/手数料等)の一定の割合を準備金として積み立てし、積立した分は全額損金計上出来る優遇税制のことです。
対象企業は
- 令和6年3月31日までに事業承継等事前申請に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けた中小企業者
- 株式取得によってM&Aを行う(取得価額10億円以下)
以上の2点を満たす必要があります。
尚、積立金は5年間の据置期間が設けられ、その後は、積立した分を5年間均等に益金として算入することが必要になります。
経営資源集約化税制の目的
経営資源集約化税制の目的については、経済産業省が以下のように説明しています。
「ウィズコロナ/ポストコロナ社会においては、【新たな日常】に対応していくことが必要。このためには、単に設備投資や研究開発等を進めるだけでは足りず、業態転換も含めて大胆なビジネスモデルの変革を進めることで生産性を向上させることが重要。…(中略)…新型コロナウイルス感染症の影響によって先行きが不透明な中において、地域経済・雇用を担おうとする中小企業による経営資源の集約化等 (統合・再編等)を後押しすることで、新規事業拡大や多角化等を図る。」
つまり、株式取得によって企業が新たな分野に挑戦する、大胆なビジネスモデル転換を行う事の重要性を考え、株式取得の大きな障壁となる税制面で優遇することで多くの企業が利用しやすくなるように税制を改正したという事になります。
経営資源集約化税制のその他のメリット
経営資源集約化税制のその他のメリットとしては
- M&A時のリスク軽減が期待
- M&A後の成長が期待
等が挙げられます。
それぞれ詳しく説明していきましょう。
M&A時のリスク軽減が期待
M&Aは、買取企業にとって将来的なリスクや、コンプライアンスリスク、簿外債務/負債のリスクは常に伴います。
通常であればデューデリジェンスを徹底的に行うことで、リスクは一定程度軽減できますが、デューデリジェンスそのものを行うためにも多大なコストがかかるため、中小企業はコストの限界があるのも事実です。
場合によってはデューデリジェンスを行えないケースもあります。
経営資源集約化税制改正前までは、M&Aにおける株式取得価額は資産計上されるため、原則他社に譲渡されるまで費用化されませんでした。
つまり、簿外債務や偶発負債が健在化しても株式取得価額を費用化出来なかったため、M&Aを実施した買手企業が全てリスクを背負わなければいけませんでした。
そのため、本制度の施行によって損失リスクに備えて準備金を積み立てることが可能になったため、株式等取得価格の一定割合に関しては費用化出来るようになります。
つまり、中小企業におけるM&Aの潜在的なリスクを低減し、M&Aの活性化に繋がることが期待されています。
M&A後の成長が期待
経営資源集約化税制はM&A後に企業が順調に成長していくために準備金の積立以外にも
- 設備投資減税
- 雇用確保減税
以上の2つの税制優遇も用意されています。
M&A後も継続的に事業拡大していく上で有効な税制優遇ですので確認しておきましょう。
- 設備投資減税
経営資源集約化税制は、経営力向上計画書を実施するために必要な設備投資に関しても損失計上の範囲として認められます。
設備投資の場合は即時償却又は取得価額の最大10%までの税額控除の適用を選択でき、企業の積極的な設備投資が可能となります。
※資本金3,000万円超の中小企業等の税額控除率は7%設備投資減税を行うことで、中小企業の経営強化が見込むことが可能になります。
- 雇用確保減税
経営力向上計画の認定を受け、経営力向上報告書を提出した上で、給与等支給総額を対前年対比で2.5%以上引き上げた場合は、給与等総額の増加分の25%を税額控除することが認められます。
雇用を確保することで、所得拡大促進が見込まれ、M&A後の企業成長を見込むことが可能になります。
経営資源集約化税制の対象となるM&Aに関しては、様々な優遇税制が適用となるため、各制度の条件面等について一度確認しておくことが大切です。