「中小企業がM&Aを行う場合の課題はある?」
このような疑問を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、中小企業がM&Aをする上ではいくつか課題を超えなければいけません。
中小企業のM&A事情についても事前に把握しておくことが大切です。
今回は、中小企業のM&Aに関する課題を解説していきます。
【目次】
中小企業とは
中小企業基本法によると、資本金もしくは常時使用する従業員数が以下に該当する場合、中小企業として扱われます。
資本金・出資金 | 従業員 | |
---|---|---|
製造業 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
中小企業におけるM&A事情
中小企業におけるM&Aは年々増加傾向にあります。
国内M&Aの実施案件数は、1990年代は700件前後で推移していましたが、2000年以降では年間1000件を超えることが当たり前になりました。
近年最も多かった2019年ではなんと4,000件を超えるM&Aが実施されました。
中小企業におけるM&Aは、事業拡大を目的としてM&Aというよりも、後継者不足による事業承継型M&Aが活発になっていると推測されます。
70代の経営者が増加している一方、思うように事業承継が出来ていな中小企業が多く存在しているのも事実で、そういった中小企業には事業承継型のM&Aが多く活用されているのが分かります。
中小企業におけるM&A課題
中小企業のM&Aが年々拡大傾向にあるなか、いくつかM&Aの課題が見えてきました。
中小企業における、超えるべき課題は以下のようなものです。
- 案件企業とのマッチング
- 従業員融和に関する課題
- 売手企業の経営不振
- 企業業過の低い会社におけるM&A
- 給与、組織体系の統合
それぞれについて詳しく解説していきましょう。
案件企業とのマッチング
近年M&Aのマッチングサイトも増えてきていることから、従前よりは企業マッチング件数は増えていますが、それでも「目的」や「希望条件」が不明確であることから、M&Aまでたどり着けないケースが多いです。
ほとんどの中小企業はM&Aを経験したことがないことから、そもそも何が正解なのか分からないままM&A相談を始めるケースも多いです。
経営者の中にある「目的」に筋が通っていなければM&Aの成功はあり得ません。
マッチングでは譲歩しなければいけない点も出てきます。
ここだけは絶対に譲れないというポイントをいくつか挙げておいて、それ以外の譲歩出来る点については話し合いの上柔軟に検討することも必要です。
従業員融和に関する課題
中小企業は大企業と違って職員間の繋がりが強い場合が多いです。
M&Aによって今までの従業員間の繋がりが変わってしまうケースも多いです。
買手側・売手側企業双方の従業員で起こり得る問題ですので、双方の経営者は従業員融和がスムーズ進むように対策を練る必要があります。
特に中小企業において従業員は会社の最も大きな資産で言っても過言ではありません。
技術を持った従業員がM&Aによって退社してしまえば、そもそもM&Aをする意味も無くなってしまうというケースも考えられます。
売手企業の経営不振
中小企業におけるM&Aでは、売手企業の経営不振によって、将来的に渡ってある経営上の不安が大企業と比較してもリスクが高いです。
また、偶発負債(訴訟により将来発生する可能性のある債務)や簿外債務(貸借対照表上に記載されていない債務)等が発覚するケースもあり、問題に発展する可能性もあります。
中小企業のM&Aでも、しっかり相手先の企業を調査し、M&Aを行って問題がないか出来るだけ確認しておくこと必要です。
企業評価の低い会社におけるM&A
中小企業のM&Aでは、例え希望案件が見つかった場合であっても企業評価が低いためにM&Aが成約しないという課題も存在します。
M&Aの最終段階で交渉が破断しないように、個人間で交渉を進めるのではなく、税理士やM&Aの専門業者を仲介に挟めて話をしていくことが大切です。
給与、組織体系の統合
M&Aによって買手企業、売手企業の組織体系、給与体系が変わることがあります。
優秀な人材を手放したくない場合は、M&Aの際に事前に従業員と雇用条件について交渉し、M&A後も継続して勤務してもらえるように話を付けておく必要があります。
また、企業文化の融和になれない従業員も出てくることも多く、退職してしまうケースもM&Aではよくある話ですので、人材確保という観点からも事前に対話を進めるなど対策を講じる必要があります。
まとめ
- 中小企業のM&Aでは「売手企業の経営不振」や「従業員融和」などが課題となる
- 大企業と比較して従業員同士の繋がりも強いことから従業員融和は双方の経営者がしっかり対処する必要がある
中小企業においては、売手企業が経営不振であったり、後継者不足からM&Aを検討しているケースも多く、買収後の企業融和や財務建て直しも喫緊の課題として扱われます。
中小企業の経営者がM&Aを検討する際は、自分一人で考えず、税理士などを初めとした専門家に事前に相談しておきましょう。
M&Aにおいてはアドバイサリー契約を結んでおくことも大切です。