「基礎控除って何?」
「税制改正によって基礎控除はどう変わったか知りたい!」
このような疑問や不安を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、2020年の税制改正によって基礎控除額の上限が引き上げられ、税負担が減る結果となりました。
しかし、基礎控除に所得制限が設けられ、一定の所得を超えると逆に不利になってしまうこととなりました。
基礎控除を適用するためにも、制度改正の内容をしっかり理解しておく必要があります。
そこで今回は「2020年の改正で基礎控除がどう変わったか?」をテーマに解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
基礎控除と所得控除
基礎控除は15個ある所得控除の1種です。
所得控除とは、要件を満たした場合に、所得から一定の金額を控除して、納税負担を軽減できる制度のことをいいます。
所得税は、「所得」を「税率」で乗じたものが適用になるため、所得控除によって「所得」そのものを減らすことで、所得税の税負担を軽減することができるのです。
尚、所得控除には
- 人的控除
- 物的控除
の2つがありますが、今回紹介する基礎控除はこのうち「人的控除」に該当します。
人的控除
人的控除とは、納税者に「扶養家族」や「配偶者」などが存在する場合など、納税者自身の「人」の環境によって、納税する金額を調整する控除のことです。
物的控除
物的控除とは、「生命保険料控除」や「社会保険料控除」など、納税者が支払ったお金の「額」を考慮して、納税する金額を調整する控除のことです。
基礎控除とは
基礎控除とは、一定の所得以下の「全て」の納税者に適用される控除のことです。
所得の要件が満たされれば広く適用できる控除のため、「基礎」控除と呼ばれています。
基礎控除の改正
基礎控除は2020年分より、従来の38万円から48万円に控除額が引き上げられました。
また、住民税の基礎控除額も引き上げられ、従来は33万円だったのに対して43万円と改正されました。
ただしその反面、所得が2,400万円を超える場合は、所得税の基礎控除額及び住民税の基礎控除額は段階的に引き下げられることとなりました。
所得が2,500万円を超えると、最終的に基礎控除額は0円となってしまいます。
<所得金額と基礎控除額>
納税者本人の合計所得金額 | 基礎控除額 | |
---|---|---|
改正前 | 改正後 | |
2,400万円以下 | 一律38万円 ※所得制限なし |
48万円 |
2,400万円超~2,450万円以下 | 32万円 | |
2,450万円超~2,500万円以下 | 16万円 | |
2,500万円超 | 0円 |
尚、2019年以前の基礎控除額は、納税者本人の合計所得金額に関わらず、一律で38万円の所得控除がありました。
したがって、年収が2,400万円以下の人にとっては有利な結果となり、2,400万円を超える人にとっては控除額が減る不利な結果となりました。
給与所得控除の引き下げ
実は、基礎控除の改正の裏では給与所得控除の引き下げが行われました。
基礎控除を一律で引き上げると、給与所得者をはじめ、フリーランスや年金受給者なども一律でその恩恵を受けることとなります。
しかし、現行制度では給与所得者や年金受給者は、所得計算時に「給与所得控除」をはじめとした控除を受けられることから、個人事業主よりも税制面でそもそも有利な制度となっています。
近年の働き方の多様化により、個人事業主やフリーランスで働く人も多くなってきたことを考えると、フリーランスや個人事業主の税負担の公平性が担保されない状況はあまり好ましくはありません。
そこで、今般の基礎控除の引き上げと同時に、給与所得控除を10万円引き下げることとなりました。
青色申告特別控除の引き下げ
給与所得控除は一律で10万円引き下げとなりましたが、青色申告特別控除に関しても要件を満たさなければ、上限額が引き下げられるように制度が変更になりました。
以前までは青色申告特別控除の要件を満たした場合は65万円の控除を受けることができましたが、2020年からは、65万円の控除を受けるために以下の要件が加えられました。
- e-Taxによる申告(電子申告)
- 電子帳簿保存
これらの条件を満たさず、税務署窓口での申告や郵送による申告などを行った場合は、青色申告特別控除は55万円に減額されます。
まとめ
- 基礎控除とは、所得控除の一種で、納税者の所得合計額が2,500万円以下であれば一定の額を所得から控除できる
- 一律38万円だった所得控除の上限額が48万円引き上げられたが、2,400万円を超える場合は控除額が減額となった
- 基礎控除上限額の引き上げに伴って給与所得控除が引き下げられ青色申告特別控除要件が追加された
基礎控除は「誰にでも」「一律」で適用できる控除として利用されてきましたが、2020年の改正によって合計所得額が2,500万円を超える人は控除の対象外となってしまいました。
また、所得金額が2,400万円を超えた場合は、従来の制度よりも控除額が減るなど、不利な制度となってしまうケースもあります。
しかしほとんどのケースでは基礎控除増額により税負担の軽減が見込まれるでしょう。
基礎控除について理解した上で、忘れずに控除を適用するようにして下さい。