2021年5月7日更新
2021年4月15日「事業再構築補助金」の申請が開始されました。
事業再構築補助金はポストコロナ・ウィズコロナの時代に対応するため、中小事業者の思い切った事業再構築を支援し、日本経済の構造転換を促すことを目的とした補助金です。
中小企業や個人事業主は最大6千万円(費用の2/3)まで補助されますが、事業再構築補助金である以上、既存事業とは違った形でビジネスを始める必要があります。
そこで今回は、事業再構築補助金の内容について詳しく説明すると共に、具体的な事例について紹介します。
【目次】
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とは、新型コロナウィルスの影響により既存のビジネスモデルが毀損し中小企業者が、新たなビジネスモデルへの転換をする際に助成される補助金の事です。
【事業再構築補助金 補助率】
企業要件 | 補助枠 | 補助額 | 補助率 |
---|---|---|---|
中小企業 | 通常枠 | 100万円~6,000万円 | 2/3 |
卒業枠 | 6,000万円超~1億円 | 2/3 | |
中堅企業 | 通常枠 | 100万円~8,000万円 | 1/2※ |
グローバルV時回復枠 | 8,000万円超~1億円 | 1/2 |
※4,000万円超は1/3の補助率
企業の思い切った事業転換に伴うリスクを本補助金を給付により緩和が叶い、再構築事業によって企業の存続を図ることを目的としていることから、具体的かつ根拠のある事業計画の策定が求められます。
事業再構築補助金を受けるための要件
事業再構築補助金を申請するためには、以下の要件を満たしている必要があります。
- 売上が減っている
- 事業再構築に取り組む
- 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
それぞれについて詳しく解説していきます。
売上が減っている
「申請前の直近6ヵ月のうち、任意の3ヵ月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3ヵ月の合計売上高と比較して10%以上減少している事」が事業再構築補助金の申請には必要になります。
【具体例 ※4月30日申請期限】(単位:円)
申請前直近6ヵ月のうち任意の3ヵ月 | 2020年10月 | 2021年1月 | 2021年3月 | 合計 |
---|---|---|---|---|
売上高 | 100万円 | 80万円 | 120万円 | 300万円 |
コロナ以前の同3ヵ月 | 2019年10月 | 2020年1月 | 2020年3月 | |
売上高 | 150万円 | 110万円 | 150万円 | 410万円 |
売上高減少率 | 33.33% | 27.27% | 20.00% | 26.82% |
以上の場合、平均で26.82%の売上減少が認められることから、要件に合致します。
事業再構築に取り組む
事業再構築とは、「事業再構築指針に沿った新分野転換、事業転換、業種転換、業態転換を行う」ことを指しています。
それぞれに要件は以下の通りです。
1.新分野展開
- 主たる業種または主たる事業を変更することなく、新たな製品等を製造等し、新たな士業に進出する事。
- 「製品等の新規性要件」「市場の新規性要件」「売上高10%要件」の3つを満たす。
例えは、製造業(航空機部品製造)を営む企業が、同じ製造で医療機器部品製造に新分野展開する場合は以下のようになる。
要件 | 要件を満たす考え方 | |
---|---|---|
製品等の新規性 | 過去に製造した実績が無い | 新たに製造する医療機器部品が過去に製造した実績の無い部品 |
製造等に用いる主要な設備の変更 | 医療機器部品を製造するために用いる専用の生産設備が新たに必要 | |
定量的に性能又は効能が異なる | 既存事業と医療機器部品製造は定量的に性能又は効能(強度や軽さ等)を比較するのが難しい | |
市場の新規性 | 毀損製品と新製品の代替性が低い | 既存事業と医療機器部品製造は代替性が無い |
売上高10%要件 | 3年~5年間の事業計画期間終了後、売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定 | 5年間の事業計画終了後、売上高が純売上高の10%以上となる計画を策定する |
2.事業転換
- 新たな製品等を製造当することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更する
- 「製品等の新規性要件」「市場の新規性要件」「売上高10%要件」の3つを満たす。
要件に関しては新分野展開を参照
3,業種転換
- 新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更することを指す
- 「製品等の新規性要件」「市場の新規性要件」「売上高構成比要件」の3つを満たす。
「製品等の新規性要件」「市場の新規性要件」要件に関しては新分野展開を参照
業種転換の場合、「売上高更生比率要件」に関しては既存の主たる事業よりも売上構成比が大きくなる必要があります。
例えば「ガソリンスタンド」→「フィットネスジム」のような業種転換を果たし、かつフィットネスの売上の方がガソリンスタンドの売上よりも上回っている必要があります。
4,業態転換
- 製品等の製造方法等を相当程度変更する
- 「製造方法等の新規性要件」「製品の新規性要件」(製造方法の変更の場合)又は「商品等の新規性要件又は設備撤去等要件」(提供方法の変更の場合)、売上高10%要件の3つを満たす。
どんな取組が対象となるのか
【ケース1:飲食店】
居酒屋を経営していたが、コロナの影響で売上が減少
→店舗での営業を廃止し、オンライン専用の弁当宅配事業を新たに開始
【ケース2:小売業】
紳士服販売業を営んでいたが、コロナの影響で売上が減少
→店舗営業を縮小し、紳士服のネット販売事業やレンタル事業へ業態を変化
【ケース3:サービス業】
高齢者向けデイサービス事業等の介護サービスを行っていたが、コロナの影響で利用が減少
→デイサービス事業を譲渡し、別の会社を買収。病院向けの給食、事務等の受託サービス事業の開始
申請方法
申請は、jGrants(電子申請システム)での申請のみの受付となっています。jGrantsをもって申請を行うためには、前もってGビズIDというIDを取得する必要があります。
尚、GビズIDは取得まで3~4週間程度かかりますので、少しでも本補助金に興味がある人は、先にIDだけでも取得しておくことをおすすめします。
事業再構築補助金の事業計画の策定について
事業再構築補助金の審査は「事業計画」を基に行われます。
つまり、合理的でかつ説得力のある事業計画を策定することが、補助金を受けるために必要となります。
事業計画は、認定経営革新等支援機関と相談しつつ策定することが求められています。
認定経営革新等支援機関には、事業実施段階でのアドバイスやフォローアップが期待されていることから、ご自身の顧問税理士事務所やメインバンクの利用を検討されると良いでしょう。
なお、事業計画の策定では以下のポイントを網羅する必要があります。
- 現在の企業の事業の「強み」「弱み」「機会」「脅威」の分析(SWOT分析)
- 事業環境や事業再構築に必要性
- 事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス・導入する設備・工事など)
- 事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題リスクとその解決方法
- 実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)
以上の点を整理すると以下のような流れで事業計画を策定する必要があります。
- 自社の特色をしっかり把握する。自社の強み、克服すべき弱み
- 自社の置かれている状況を把握する。市場機会はあるか?回避すべき脅威はあるか?
- 自社の特色を総合的に把握し、事業再構築する必要があるのか合理的に分析する
- 事業再構築の具体的な内容を記載する
- 再構築する事業の市場状況、既存事業との相乗効果が得られるか等を記載する
- 自社の弱みや脅威を再構築事業で克服できるか分析する
- 実施の体制やスケジュールを明確にする
- 事業の1/3の資金調達方法を明確にする
- 再構築事業の付加価値増加を予想し明確化する
- 具体的な収益計画を作成する
特に自社のSWOT(強み・弱み・機会・脅威)分析はしっかり行うことが重要です。
- 自社の強みを更に強く出来る再構築事業
- 自社の弱みを克服出来る再構築事業
- 自社の置かれている立場、市場環境を有利に出来る再構築事業
このように、再構築事業が既存の事業の立て直しにどのような影響を及ぼすかまで合理的に分析出来れば、より良い事業計画にすることが可能です。
事業再構築補助金そのものが、コロナで毀損したビジネスモデルの再構築であることから、自己分析からの立て直しまで一貫した事業計画を作る必要があるということです。
仮に補助金が採択されたなかったとしてもSWOT分析することで、自社の優れている点や足りていない点を把握出来るメリットがあることから、自己分析する面でも徹底的に行うようにしましょう。
認定経営革新等支援機関とは?
認定経営革新等支援機関とは中小企業を支援出来る機関として経済産業大臣が認定した機関となります。
具体的には
- 金融機関
- 支援団体
- 税理士
- 中小企業診断士
などが該当し、全国で3万件以上存在します。
中小企業庁のHPで認定経営革新等支援機関を検索することが可能です。まずは、お近くに認定経営革新等支援機関があるかどうかを調べておくようにしましょう。
尚、本補助金は、事業に係る資金の2/3が補助対象となりますので、1/3に関しては自己資金で対応する必要があります。
もし1/3の部分に関して融資を受ける予定であるなら、認定経営革新等支援機関は税理士事務所やメインバンクにしておくと、スムーズ資金繰りまでサポートしてくれるのでおすすめです。
事業計画の策定には「認定経営革新等支援機関」や「金融機関」の確認書の提出が必要
事業計画の策定には「認定経営革新等支援機関」や「金融機関」の確認書の提出が必須です。
事業者の応募申請に当たって、事業契約の策定をサポートしたり、応募申請時には税理士事務所や金融機関が確認をして、確認したことを証明する確認書を提出する必要があります。
採択後の補助事業実施の際には、専門的な観点から助言やサポートを行っていけることを想定していることからこのような手続きとなります。
つまり認定経営革新等支援機関とペアを組んで申請する必要があるため、事業計画の策定を個人的に行って、個人的に提出することは出来ないということになります。
事業再構築補助金を検討している人は、利用する認定経営革新等支援機関を早めに決めておくことをおすすめします。
なお、認定経営革新等支援機関によっては事業計画策定業務を有償で行うケースが多いですので、あらかじめどの程度お金がかかるのかは確認しておく方が良いでしょう。
事業再構築補助金の申請を検討している人は早めに認定経営革新等支援機関へ相談
事業再構築補助金の申請には、認定経営革新等支援機関の確認書が必要になることから、最初から税理士事務所などに相談しておくと二度手間になりません。
また、事業再構築補助金の公募機関は公募開始から1ヵ月程度とされていることから、スムーズな作成、提出が求められます。
確実に着手していくためにも予め税理士事務所等に補助金の申請について相談しておくことが望ましいです。
顧問税理士がいない場合や、どこの税理士事務所に依頼すれば良いか分からないという人は、税理士紹介サイト等利用してみるのも手段の一つですので一度利用してみてはいかがでしょうか。
補助対象経費
本補助金は、基本的に設備投資を支援するものです。設備費のほか、建物の建設費、建物改修費、撤去費、システム購入費も補助対象です。新しい事業の開始に必要となる研修費、広告宣伝費・販売促進費も補助対象です。
【主要経費】
- 建物費(建物の建築・改修に要する経費)、建物撤去費、設備費、システム購入費
【関連経費】
- 外注費(製品開発に要する加工、設計等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)
- 研修費(教育訓練費等)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
- リース費、クラウドサービス費、専門家経費(特許関連の取得や大学教授)
補助対象外の経費の例
- 補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費
- 不動産、株式、公道を走る車両、パソコン、スマートフォン、家具等汎用品の購入費
- 販売する商品の原材料費、消耗品費、光熱水費、通信費
認定経営革新等支援機関への報酬やコンサルタント料等は経費対象外
事業再構築補助金に関するよくあるお問合せの「Q11.認定経営革新等支援機関への報酬は必要か。また、報酬は補助対象となるのか。」に認定経営革新等支援機関への報酬は補助対象外となる予定とありますのでご注意ください。
認定経営革新等支援機関への報酬を必須とするような要件は設けていません。事業者ごとに、それぞれご利用頂く機関とご相談ください。また、補助金への応募申請時の事業計画書等の作成に要する経費(認定経営革新等支援機関に対する事業計画策定のためのコンサルタント料等)は補助対象外となる予定です。
「事業再構築補助金」関連リンク
2021年4月14日 その他の参考書類が改訂されました。
- 電子申請入力項目(Word)
- 認定経営革新等支援機関による確認書(Word)
- 金融機関による確認書(Word)
- 緊急事態宣言の影響によることの宣誓書(Excel)
- 緊急事態宣言の影響によることの宣誓書(見本)(PDF)
- 補助対象経費理由書(Word)
- 補助対象経費理由書(見本)(PDF)
- 売上高減少に係る証明の特例(PDF)
2021年4月15日(木)より事業再構築補助金の申請開始予定が発表されました。
令和3年3月26日(金)に公募要領が発表され、同時に事業再構築補助金事務局ホームページが開設されました。
令和3年3月17日に事業再構築指針が発表されました。
(「事業再構築指針」は、事業再構築補助金の支援の対象を明確化するため、「事業再構築」の定義等について明らかにしたものです。)
【事業再構築指針】
【事業再構築指針の手引き】