税金基礎知識ブログ

中小企業等のM&Aと労務DD

中小企業等のM&Aと労務DD

中小企業等を取り巻く喫緊の課題

中小企業庁の調べでは、2025年までに70歳を超える中小企業及び小規模事業者(以下「中小企業等」)の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定となっています。

この127万社という数字は、日本全体の企業数の1/3に当たります。

これをそのまま放置すると、中小企業等の廃業の急増により、2025年までの累計で、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるとしています。

これらの課題解決の一つとして、第三者への事業承継(本稿では「M&A」とします)のニーズが高まりつつあります。

デューデリジェンスとは

デューデリジェンス(Due Diligence)とは、Due(当然・正当)Diligence(精励・努力)という意味で、投資を行うに当たり、投資先企業の価値やリスクなどを事前に調査することを言います。

M&Aにおけるデューデリジェンス(以下「DD」)の目的は、買収企業の経営環境、事業内容などを調査し、財務状況・収益力について分析を行い、法務面の問題点・リスクを洗い出して、より正確に企業実態や事業運営の手法を把握することです。

その種類には財務DD、法務DDなどがあり、労務DDも重要な位置を占めます。

労務DDの定義とその内容

労務DDについては、法律等での明確な定義はありませんが、一般的に「労働に由来する潜在債務を調査すること」となります。

ここでの潜在債務とは、簿外債務と偶発債務を合わせた概念になります。

簿外債務とは、本来、費用として財務諸表に計上されなければならない債務を言い、未払残業代や加入漏れの社会保険料などが挙げられます。

偶発債務とは、将来、想定外の出来事で発生し得る債務を言い、解雇の無効や管理監督者と認められないなどによるバックペイ(遡っての給与等の支払い)、労働災害やハラスメント問題による会社の損害賠償リスクなどがこれに当たります。

近年、第三者への事業承継(M&A)をスムーズに遂行するため、また、売り先企業が自社をより高額で売却するため、さらには人的資本経営の高まりからも、事前に潜在化しているリスク対応としての労務DDが注目されています。

注目記事 最新記事
  1. お金を友人に貸すと税金がかかるって本当?
  2. 外国税額控除の控除限度額と繰越控除
  3. 在庫が決算に与える影響とは?粉飾決算は在庫がポイント!
  4. 法人税・所得税の税務調査統計
  5. 決算で減価償却費を利用した利益調整を行う方法
  1. 租税回避ブラン以外での総則6項の適用は違法
  2. 労働基準法の代表的な帳簿とは
  3. 遺族年金「給付5年」は誤解?
  4. 令和5年度 租税滞納状況の概要
  5. 小規模宅地等の特例 -家なき子-

税務知識ブログカテゴリー

PAGE TOP