投資時点でのエンジェル税制の優遇措置
投資時点での優遇措置であるエンジェル税制の優遇措置A(みなし寄附金)、優遇措置B(みなし譲渡損)、起業時特例(20億円限度非課税みなし譲渡損)、プレシード・シード期(設立5年未満・営業赤字等々)特例(20億円限度非課税みなし譲渡損)は、所得税のみに認められている制度で、住民税には適用がありません。
売却時点でのエンジェル税制の優遇措置
それに対して、売却時点でのエンジェル税制優遇措置があります。
この売却時優遇措置では、エンジェル税制対象企業の株式売却により生じた損失を、その年の他の株式譲渡益(上場・非上場問わず)と通算(相殺)できることになっています。
また、その年に相殺しきれなかった損失は、翌年以降3年に亘って順次株式譲渡益と通算(相殺)できます。
この優遇措置は、所得税及び住民税の両方に認められています。
課税の繰り延べとしての優遇
なお、投資時点での優遇措置を受けていた場合、優遇措置A、優遇措置B、及び起業時特例(20億円超部分)、プレシード・シード期特例(20億円超部分)は、課税の繰り延べ措置なので、優遇適用を受けた金額を株式の取得価額から控除しなければなりません。
しかしその時、住民税では特に優遇措置されていないので、住民税法上では、株式の取得価額からの控除は無く、原始取得価額がそのまま生きています。
課税の繰り延べのない住民税への無配慮
ところが、投資時点での優遇措置を受けていた場合の、売却時点でのエンジェル税制の適用では、所得税と住民税では、株式取得価額の金額が異なることになるものの、現行の申告制度では、この相違が自動的に確認できるような仕組みになっていないので、住民税での課税所得も、所得税と同じく減額された株式取得価額で計算されてしまうことになってしまいます。
自力救済しないと無視され損をする
そのため、確定申告書(分離課税用)の「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の中の、エンジェル税制利用により調整された株式の取得費の欄に、住民税では所得税と異なり原始取得価額が適用されるべき旨のメッセージをメモしておくとか、住民税を管轄する区役所や市役所の担当者に直接説明する対応を採るとかの必要がある、と言われています。