災害と時間外労働の関係
今年は元旦に能登半島での大地震があり、夏には南海トラフ地震の注意喚起がされました。
さらに、ここ数年大雨での局地的な水害も多く発生しています。
災害は予告なく起きるものですが、一方で、企業は、災害が発生した場合には社会インフラを止めてはならず、可能な限り早急な復旧が求められます。
これらの対応のため、従業員に法定労働時間や法定休日を超える労働(時間外労働)をさせる必要が出てくることもあります。
時間外労働といえば、労働基準法36条による「36協定」の締結によるものが一般的ですが、同33条では、「災害等による臨時的な時間外労働」が認められています。
労基法33条の概要
労働基準法33条を要約すると、「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合においては、企業は、労働基準監督署の許可を受けて、必要な限度の範囲で、時間外労働をさせることができる」とされ、また、同ただし書きでは、「事態が切迫して、労働基準監督署の許可を受ける暇がない場合には、事後に遅滞なく届け出る」ことも認められます。
適用上の注意点
労基法33条を適用して、時間外労働をさせる場合には、次のような注意点があります。
- 労基法33条を適用する場合でも、割増賃金の支払いは必要になります。
- 労基法33条を適用する場合には、いわゆる上限規制が適用されませんが、それゆえ健康障害を防止する措置を講じる必要があります。
- 「労基法33条による時間外労働を、従業員は拒否できるか」の問題について、就業規則等に「緊急で必要がある場合には、時間外労働を命ずる場合がある」旨を規定しているのであれば、従業員はその命令に従う義務があります。逆に、就業規則等にこれらの記載がない場合における従業員の義務については、「有り」とする説と「無い」とする説に分かれています。従って、仮に記載がない場合には、復旧作業等に従事する従業員から、個別の同意を得たほうが無難といえるでしょう。