「民商の会員だけど税務調査に立ち会いはしてくれる?」
「民商で確定申告を作ってもらっているけど問題ない?」
このような疑問や不安を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、民商の担当者が税務調査に立ち会いするのは税理士法違反に該当する可能性が極めて高いです。
また、民商の担当者に確定申告の作成を代理してもらっている場合も税理士法違反に該当しますので、辞めた方が良いでしょう。
確定申告はあくまで自分で行うか、それが出来ないのであれば税理士に依頼する他に方法はありません。
しかし、実際に民商の担当者に税務調査の立ち合いをしてもらったという人もいるかもしれません。
しかしそこには大きなリスクが隠れていることも理解しておく必要があります。
民商とは
個人事業主の人は、取引先の紹介などで民商を利用している人も多いかもしれません。
民商とは「民主商工会」の略で、中小企業や小規模零細企業の「会計相談」「帳簿記帳相談」「経営相談」などを行っている団体です。
北海道から沖縄まで約600の事務所が日本各地に存在しています。
民商の理念は「小企業・家族経営の社会的・経済的地位の向上をめざし、”商売を続けることが社会貢献”と、経営環境の改善や地域おこしの取り組み」することです。
しかし、税務のこととなると度々民商が問題として取り上げられます。
理念を見たら問題がないように見えますが、民商を利用すると何が問題となるのでしょうか。
詳しく解説していきましょう。
民商と税務
民商は会員の「自主記帳」の権利を最大限尊重し、確定申告を行います。
会員に対して簿記や会計の勉強会は行っていますが、基本的に会員の提出した書類に対して、税理士事務所のように内容の精査をしっかり行うところまでは行いません。
民商がよく「粉飾決算を補助している」や「過少申告を行っている」と言われる理由は、税理士のように整合性を取った帳簿作成を行っていないからです。
申告したものの中には、極端な売上の過少申告があったり、経費の過大算入があったり、税務署からすればまともな決算書を作っている団体とは思われていないのが現実です。
民商と税務調査の立ち合い
尚、民商と税務について問題提起する時に、最大の問題となるのが「税理士資格のない者の税理士業務」についてです。
民商を利用している会員に「確定申告はどこかに依頼していますか?」と尋ねると「民商さんに作ってもらっています」と言われることがありますが、税務書類の作成に関しては「税理士業務違反」で違法行為です。
しかし、民商の立場からすれば「自主記帳」していることになるため、税務書類の作成はあくまで会員が自分の意思で行っていることになります。
自主記帳であればもちろん問題にはなりません。
事実、民商が税理士業務を行っているかについては、個別の判断となるため明言が出来ないのが現状です。
民商が会員の自主記帳と言うのなら、事実摘発が難しいのが現状でしょう。
しかし、民商が行っている「税務調査の立ち合い」に関しては、税理士業務にあたる可能性があります。
そもそも税理士法上の問題で、第三者に対する情報漏洩(守秘義務)の観点から、税務署の調査官は税理士資格のない者の立ち合いに関しては排除する必要があります。
それでも民商の人が「立ち合い」を求めてくる場合は、税理士法に違反し、かつ納税者にとっておおきなペナルティが科せれる可能性が高いです。
調査妨害に対しては、更に厳しい条件を持って税務調査が行われます。
例えば、調査によって
- 領収書もなく算定根拠のない経費算入や
- 口座入金されているのにも関わらず売上計上していない過少申告
などが判明した場合、推計課税が適用され、多額の追徴課税が科せられます。
おそらく、まじめに申告している金額をはるかに超える「延滞税」「加算税」が科せられるでしょう。
民商立ち合いで調査妨害した場合や、悪質な所得隠しを行った場合は、税率が最も高い「重加算税」の適用がなされます。
この場合、税金の支払が出来ず差押えになって事業が停止するなんてこともあり得ます。
青色申告者はもちろん青色申告の取り消しとなるなどのペナルティも受けることとなります。
まじめに申告して節税対策を行っていた方が、何よりも税金支払いが少なく済むのです。
民商と税理士
民商は月々の利用料が安く、特に良い団体と思っている小規模企業も多いでしょう。
もちろん会員になって良いこともあるでしょうが、税務調査の立ち合いで大きな問題になるくらいであれば、最初から税理士事務所に依頼しておいた方が良いとはっきり言えます。
実は税理士を利用して適切な節税を行えば、民商の会費分くらいはしっかり税金から対策してくれる場合が多いです。
また、助成金や補助金、経営指導など、税理士資格を持ったプロにお願いした方が得られる情報が多いのも事実です。
もちろん、税務調査が入っても、税理士であればしっかり立ち合いしてくれますし、違法行為に該当しません。
民商が必ずしも悪いとは言いませんが、今後も事業を拡大していきたいのであれば、今一度考え直す必要があるかもしれません。