「相続税を支払済なのに、相続時に再度課税されるって本当?」
「贈与税額控除について知りたい!」
このような不安や疑問を抱えている人は少なくありません。
結論から言いますと、既に贈与税を支払った財産に関しても、相続発生時期によっては相続税として課税されることがあります。
ここで注目したいのが「二重課税」の問題です。
仮に贈与税を支払ったものに関して、再度相続税の支払い義務が発生するのであれば、それは二重課税となってしまいます。
そこで登場するのが「贈与税額控除」です。
実は、贈与税額控除を受けることで二重課税を防ぐことが出来ます。
今回は、贈与税額控除の仕組みについて解説するとともに、二重課税にならない理由について説明していきます。
【目次】
贈与税と相続税が二重課税される?
結論から言いますと、贈与税を支払って取得した財産であっても「3年前までに贈与を受けた財産」に関しては「相続財産」としてみなされることから、相続税の課税対象となります。
相続対策、節税効果の高い生前贈与ですが、相続前3年間の贈与においては相続財産に組み入れて相続税を計算するという決まりがあることから「贈与の時期や相続の時期を見誤ると同じ財産に対して贈与税と相続税を両方払うのでは?」と、所謂二重課税ではないかと悩む人も実は多いです。
実は、そのような問題を解決するために「贈与税額控除」という制度が用いられています。
贈与税額控除とは、既に支払っている贈与税を課税される相続税から控除できる制度です。
贈与税として支払った分は相続税から差し引かれるため、二重課税されることは原則ありません。
二重課税を防ぐ贈与税額控除
贈与税額控除は、既に支払った贈与税額を相続税から控除できる制度のことです。
これは、相続税が、相続発生前3年以内の贈与について課税対象となることから、既に支払った贈与税との二重課税を防ぐために作られた制度です。
ただし、もともと贈与税がかかっていない贈与については注意する必要があります。
年間110万円以下の贈与で「暦年課税制度」を利用していた場合は、贈与税がそもそも非課税ですが、非課税で受け取った財産であっても、それが3年以内に贈与されたものであれば、相続税の対象となってしまいます。
もちろん贈与税を支払っていないため、贈与税額控除の利用は出来ません。
相続財産に全て組み入れられた状態で課税対象となります。
贈与税額控除が使える条件
贈与税額控除が使える要件は以下の3つです。
- 相続財産を受け取ること
- 3年以内に贈与を受けること
- 贈与税を既に納めていること
それぞれ詳しく説明していきましょう。
相続財産を受け取ること
贈与税額控除を受ける場合は、そもそも相続や遺贈により財産を取得した人が対象となります。
つまり、贈与税額控除の対象者は「法定相続人」のみです。
その上、法定相続人が相続放棄した場合など、相続財産を引き継がない場合は、贈与税額控除の対象になりませんので注意が必要です。
3年以内に贈与を受けること
亡くなった日から遡って3年前の同じ日以降に贈与を受けた場合は、贈与税額控除の対象となります。
【贈与税額控除対象期間】
相続発生から3年前 | 贈与を受けた日 | 贈与税申告 | 相続発生日 |
---|---|---|---|
平成30年9月20日 | 令和1年9月20日 | 令和2年3月1日 | 令和3年9月20日 |
例えば、令和3年9月20日に亡くなった場合は、平成30年9月20日~令和3年9月20日までに受けた贈与が対象となります。贈与を受けた日が令和1年9月20日だった場合はその贈与は遡って相続財産としてみなされます。
上の例では令和2年3月1日に支払った贈与税分は贈与税額控除の対象となります。
尚、平成30年9月19日依以前に受けた贈与については戻し入れの対象とはなりません。
贈与税を既に納めていること
贈与税を納めていなければ贈与税額控除の対象にはなりません。
先ほども説明しましたが、贈与税額控除とは、贈与税と相続税の二重課税を防ぐために利用される制度であることから、そもそも課税されていないものに対しては税額控除を利用することは出来ません。
贈与税額控除は「贈与税を支払ったかどうか」で判断されます。
例えば暦年課税制度を利用して200万円の贈与を受け、90万円分に対して課税された贈与税を支払っている場合、その90万円の部分については贈与税額控除の対象となります。
まとめ
- 贈与税を支払っている財産が相続財産となった場合贈与税額控除を利用できる
- 贈与税額控除が利用できるかどうかは、贈与税が課税されたかどうかではなく、贈与税をいくら支払った実績を基に判断される
贈与税と相続税の二重課税を防ぐために、贈与税額控除は必ず利用するようにして下さい。
生前贈与は相続対策の基本ですが、相続の発生時期によっては相続としてみなされる可能性があることを注意して、計画的な贈与を心掛けるようにしましょう。