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金融所得課税は分配に有効か?

金融所得課税は分配に有効か?

岸田首相は政権公約で「成長と分配の好循環」のため、「金融所得課税の見直し」を選択肢の一つとし、『1億円の壁』の打破を打ち出しましたが、首相就任後、早々に先送りしました。

はたして金融所得課税は、分配政策として有効なのでしょうか?

富裕層が優遇される1億円の壁とは?

所得が1億円を超えると、所得税の負担率が下がります。

これは、富裕層で株式や債券など金融商品に投資を振り向ける金額が大きくなり、分離課税20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の結果、総合課税の累進課税の効果が薄まることによると考えられています。

そこで、所得税の分配機能を高めるため、金融所得課税の税率をあげることにより、富裕層の負担を増やして分配の原資にあてるべきと考えたわけです。

むしろ中間層の課税強化につながる

証券系シンクタンクの2018年の調査レポートは、所得1億円を超える納税者は全体の0.04%に過ぎず、金融所得の税率を引き上げても増税による税収は少なく、むしろ金融商品に投資する中堅以下の所得者層の増税効果の方が大きいと分析しました。

また、税率の引上げは創業意欲を減退させ、投資家がより低い税率の海外に逃避するおそれも指摘されています。

これでは従来の「貯蓄から投資へ」の政府方針に反する結果にもなりかねません。

「新しい資本主義実現本部」の立ち上げ

政府は10月に「新しい資本主義実現本部」を立ち上げ、成長政策とあわせて賃上げや非正規雇用、看護・介護・保育、子育て支援などの分野で分配政策の検討を開始しました。

税制では「新しい資本主義の時代における今後の税制のあり方」を政府税制調査会で検討することが盛り込まれています。

分配政策の社会的意義

産業革命以降、成長と分配はいつも経済政策の主要課題でしたが、この40年間、新自由主義は世界中で所得格差と分断を広げました。

これに対し、分配の公正と貧困の解消の立場で自然環境、社会的インフラ、教育や医療などの社会的共通資本を、豊かな社会をつくる装置として機能させることを提唱した経済学者もいます。

成長と分配はこれからも経済の根源的な課題であるといえます。

累進課税や資産課税に所得再分配機能をもたせてきた税制も新たにどのような分配政策を考えられるかが問われます。

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